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塗れた羽毛に朝と夜
最近の変化と言えば、自分の頭の中に住み着いた全能感は全く消える気配を見せず、既に慣れ切ってしまい隠す事が無意識の内に行える様になった事だろうか。
後は最近の内に短い時間の内に欠点を毒混じりに指摘する事が得意な友人達の期待に応えるべく入念な下調べを行う様になり、その結果外食が増えた。移動費も自腹だがやってしまったのは自分だから問題無い。
依頼は出来る限り手短に済ませて居る。それにしても時間が無い。休める時間を散策に割り当てて居るので毎日が忙しい。外出も増えて居るので便利屋に留まる時間も減って居る。

「…私の料理、もう気に入らなくなったのかな…?」
「…………」

便利屋での食事回数も減ってしまって、要するに料理並びに家事担当のフーガさんから真夜中に涙目で詰め寄られて居る今の様な出来事が起こり得る。寝間着も隠す必要が無い程度に細いビキニパンツで。
申し訳無さは少し感じて居たが、あの二人を満足させるにはここまでの処理が必要だから。決してフーガさんの料理が気に入らなくなった訳では無い。それは味とレパートリーに誓って言える。
今にも泣きそうだったので素直に事情を話す。所長に比べると規模は小さいが悲しませると弊害がでてしまうから。話を終えると暫く此方を見つめたかと思えば、予想通りに抱き着いて来た。
暖かくて柔らかくて甘い匂いを纏った羽毛に容易く自分の顔が埋まり、身体が簡単に浮き上がる。嬉しそうに顔を擦り付けられて居る様で嘴の硬い感触が後頭部に毛繕いする様に当てられて。

「良かった…てっきりサイ君が、私の、うぅっ、良かった、良い子で……」
「…………」

自分の見解だが便利屋一しっかりしている副所長以外の皆には内緒だったが仕方無い。フーガさんが秘密を守ってくれる事を祈る。それで自分の身体は緋色の羽毛に埋まったまま一向に離される気配は無い。
次第に手が自分の背中から腰へとゆっくり撫でながら下って行くのを感じて、捕まってしまったと気付く。数分後には既にフーガさんの自室に連れ込まれてしまって居た。暗くて分からないが既にベッドの中だ。

「…今日ぐらいは一緒に寝ても良いよね…何もしないからさ…」
「…今日だけですよ…」

毛布と羽毛に挟み込まれると随分と暖かい。匂いと感触も落ち着く。自然と湧き上がる眠気に任せても良いのだろう。既に腰を直接撫でられているのは気になるが。眠気は消えないままゆっくりと意識を睡眠に落とした。

夢の中では柔らかくてふわふわした感触な熊の縫いぐるみに抱き着かれて、そのまま川に流され続ける夢を見た。滝に差し掛かった所で目覚め、朝起きると隣には誰も居ない。フーガさんの朝は、便利屋の中で一番早い。

[ネクスト#]

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