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意訳解して暇空く
ここまでの勘違いは訳が有る。自分の身の小ささはしっかりと把握出来て居るがいきなり挟み込まれる様に窮屈に抱き締められるのは流石に過保護だ。あの二人なのに興奮した様子も見せない、妙な雰囲気を感じさせず素直に哀しんで居るのもおかしい。
先程の本を借りて読んでみる。理由は直ぐに見付ける事が出来た。本の作者は望遠レンズを破壊されてから安全策を取り退却して居た。終わりの言葉には「せめてあの街の文化が破壊されない事を」と悲観的な視点で締めて居る。
結末までは書かれていないのが要因だ。文章力自体は高いとは言えず各部分の描写も乏しい事からあまり出回って居ないと思える事が唯一の救いだろうか。裏表紙には荒い顔写真が載っていた。恐らくは若い狸人。

「………………」

母さんは今でも元気だった。父さんは今でもある程度の想像は十分出来て居たが全く音沙汰が無く、やはりそうなのかと思ってもいるが何処に居るのか想像も付かない。国の話からするに今でも頭は育っている様だ。
目撃情報は聞き取れたがその後の行動が読めなければ意味は無い。他人の行動を完全に読み切るなんて余程に解り易い相手だとしても難しく当然この頭の中に居着く全能感も役に立たない。肝心なのはこれ以上野放しにしては世界が危ないという事だ。
だがどうしたら良いのかについてはそこで詰まってしまう。家族ならば読み易い。要するに一旦父親の事は忘れる事にした。長期的な道筋よりも短期的に自分の今直ぐにやるべき事を済ませる。考えも纏まり、下に降り通信機を手に取った。

「……ラーツ、久し振りだね」
『本当だよね。耳から膿でも流れ出てたのかと思った』
「ちょっと任務の後が長引いてね…最近空いてる時間は有るかな…」
『んーと…まあ二週間後にこの腐れ世界が平和だったら空いてるかな…もう一人便利屋の奴の都合も必要なんだよね?別にシカトして良いんじゃないかな』
「そんな訳にも行かない、僕にとっては大事な相手だから」
『まあ俺は君に奢って貰えたら良いんだけどね…じゃーね』

二週間後は恐らくは大丈夫だろう。蒸発期間も有ったが外す訳にも行かない。その日が来るまでは依頼に誠心誠意取り組む予定だ。続いては最近会ったばかりの彼に。

「もしもし、そっちにキサラギと自称で呼ばせている兎人は居ますか」
『……サイ?』
「やあ、ウサギ君…二週間後は会いてるかな」
『あー、その…取り敢えずうん、大丈夫だよ是非とも大丈夫にするよ…ちょっと君と別れてからショッキングな事が立て続けにね…心の整理を付ける為にも』
「分かった。それから…気になる事があったら僕の同伴者に相談すると良い…きっと力になるから」
『はーい…正直君が一番の力になると思ってるんだけどね……』

珍しく三人とも都合が合った。父さんを見付けるのは、まだ後回しでも良いだろう。


【第二十五巻 終】

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あきゅろす。
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