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天使堕ち抜き紅染まる
彼が意図的に隠さない限りは何もかもが理解出来る筈である。何故彼がイセラさんと顔が似ているのか。以前喋っていた事の真偽について。今の山羊人には先程とぼけた様子が全く見られない。
自分と彼以外に何も見えなかった空間に何かが浮かび上がり始める。赤毛に赤い瞳、紛れも無くそれはイセラさんだった。この時は人間の姿をしている。映像だったがその顔は相変わらずの笑顔を浮かべている。

「もう既に知っているでしょうが、彼がイセラ…私の報告からすれば…年前に急に魔界へと『堕ちて』来たそうです…」
「…質問です」
「はい、何でしょうか?」
「やはり魔界とは下に有るのでしょうか」
「はい。空間的な話においても魔界は下に存在しています。そして天界は基本貴方達が生活してる世界の上に存在します」

一般的な考えと実際に一致しているとは中々珍しい事では無いだろうか。死んだ後の魂が空間の壁を簡単に乗り越えて天界にまで昇るとは思えず、神の存在についても怪しい。
大層な話になっているが、目の前の映像は翼の様な物を出しながらイセラさんが堕ちて行って。その右下には『映像は再現です』と丁寧にも言葉が書かれている。
技術を持ってイセラさんが魔界に降り立つ姿が見える。背中に生えていた翼は両方とも破壊されてしまっていて。何故かイセラさんが全裸に、そして内側が透け内臓が見える様になった。心臓の裏側、背骨の奥辺りに見覚えが無い器官が見えている。

「これは彼が言うには…と言うのも以前にも数件魔界に赴いて来た天使を調べた結果ですが、これが天使が天使で有る為の器官らしいです…此処が天使の動力源になるとの事」
「ちゃんとした器官を作る事での、魔力の向上が狙いでしょうか」
「そう見受けられますが、魔界に堕ちて来たし時イセラの器官は殆ど機能していませんでした…さて、力は殆ど使えず、辺りは全く知らない世界。絶望ですね。しかし彼はどうしたのか?」

自分の目の前の映像では、イセラさんが焔に包み込まれて居た。とてつもなく怪しい予感がする紫色の焔の中に。服は焼け焦げて全裸で、その身体も多量の火傷が出来上がっている。
皮が破れて爛れた顔でも、何故か笑っていた。全身に焔を吸い込んでいる様にも見える。やがて焼けていた身体が赤く染まり始めた。天使だったらしい彼の姿が変貌して行く。右下には『本人との会話を元にした再現です』。

「この様にして無理矢理、急拵えで力を付けたのでした。良い子どころか悪い子も引くこのやり方、何の為に?」
「…彼の事ですから、賭けにでも出たのでしょう」
「…またしても正解ですね…どうせならと…この私を狙いに来たのですよ、真っ直ぐ」

付け焼刃でも魔王の命を狙いに掛かる。分の悪過ぎる賭けだがイセラさんだからこそ喜んで向かって行ったのだろう。例え奇跡が起こらなかったとしても。

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