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檻を写して彼出会う
ウサギ君を拘束する必要は無くなり、今日中に二人に相当な心的外傷を患ってしまったであろう彼を逃がした。日記帳もしっかりと保護されて万事安全、狙撃手との誤解も解けるには解けた。もう此処に居る理由は何も存在しない。中々に縁起も悪い。

「このままイセラの見舞いにでも行く?あの便利屋に帰る?」
「少しぐらい顔を見たいですね…どれ程に危ないのか、気になります」

心配はして居る。悪魔である筈のイセラさんが入院しているという時点で事態の申告さが解るが、いざとなったらどうとでも出来る。死人を生き返らせる事さえも可能だと自分の中の全能感が騒いでいて。
悪魔だが友人の命を救う為に一線を越えてしまうのはどうだろうか。そんな事を考えている内に造作も無いと全能感。それにしてもイセラさんが心配で心配で仕方無い。そう考えなければ。
収監所から出るに合わせて、何故か此方に向かって飛行艇が飛び、収監所の中に音を立てながら着陸しようとして居た。自分達には関係無い。厄介な事にならない様に祈っておく。




「やぁやぁ皆様!良くぞ参られましたねっ!取り敢えず病院という事で何ですから、これが精一杯の音量ですっ!ご了承下さい、ね?」
「……………」
「……………」

案内されたのは、悪魔が使うにしてはまともで、ありきたりで、大体言える事だが小綺麗な病院だった。
シフカさんとドミナーさんがきっちり上下に服を着ていたのは良い。だが、この山羊人は一体誰だろうか。気さくな様子で此方に向かって笑みを浮かべている。病院の待合室だからか小さな声だったが。
体毛の色などは異なる点が有ったが、彼は随分と悪魔さんに、つまりは形態を変えたイセラさんに似ていた。身内だとすればこのテンションはおかしい。おまけに自分と同行して居た筈の二人も固まっている。

「さぁて、まずは連れション行きましょうよ、私達の友情の証として」
「あの、貴方は一体」
「…いってらっしゃい」

待ったなしに彼に手を引かれながら、誰も止めてはくれなかった。更にはエイサスさんが呟く、彼はそれ程までに悪魔達が逆らえない相手なのだろうか。
拾い直した銃を使っても良いが病院で使うとは倫理的な問題が存在する。いざとなったら、と右腕に巻いたイセラさんの牙を軽く握り締める。手の中で熱を放っている様に感じた。

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