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心打ち込み液纏う
事態が全く好転しないのでウサギ君を連れて一時撤退。手頃な部屋に入って見たら相当な量の血飛沫が飛び散っていてウサギ君がまたしても驚く。窓には鉄柵が嵌まって居て狙撃はされないだろう。

「…で、どうしますか?」
「もー少しこのウサギで遊びたーい」
「賛成」
「ふにゃあぁぁぁ!?」
「…………」

数発撃たれて居るのに構わずウサギ君に宜しく無いスキンシップを取ろうとするのは悪魔だからか。もっと別の部分にも確かな問題が存在するだろう。貞操は守ろうと身ぐるみ剥がされ掛けて居るウサギ君を身を呈して庇う。
自分達とは別の非常事態に抱き着いて来たが日記帳の角が胸元に押し付けられかなり苦しい。が、これ以上二人にやられると本気で泣きそうな気もして来たので悪魔達からウサギ君の身体を無理矢理離す。

「今の状況はかなり悪いです、彼を逃がすのが得策かと思います…だから日記帳を離して」
「絶対やだ!君には悪いけどっこんな奴等の利益になる事なんかやりたくないっ!」
「…僕達だって自分の利益目当てでこんな事してる訳じゃないよ」
「え…?」

確かに悪魔と言えど心は恐らく存在して居るし、友人を大事にしたいという気持ちを伝えられる事も出来るに違いない。情に語り掛けるのは相手によっては効果的な手法である。ウサギ君を弄んだ末に語るのはタイミング的に問題があると思うが。
続けてクグニエさんも語る。自分達は大事な大事な友人を助ける為にその日記帳が必要である事を。その友人について多分今生死の境を彷徨っている事を。皮の破れた両腕から露わになった硬質な手を硬く握り締めながら。
ウサギ君は話を黙って聞いて居たが、手は自分の身体と日記帳を離そうとはして居ない。完全に警戒しながらも心に来る物があったのだろうか、確かにイセラさんはまともな部類だ。彼等と比べると。自分だって彼には死んで欲しくない。

「…それなら…その…」
「君の手の中に一人のあ…人の命が握られているんだよ?そのまま握り潰せるなんて、よっぽどの人でなしで無い限り無理だよ?」
「…………」

無言でウサギ君が折れ、日記帳を握っていた手が離れてやっと自分の手に戻る。手を差し出して居たのでクグニエさんに渡す。口からいきなり吐き出された原色の黄色い粘液が浴びせ掛けられる。本当に何がしたいのか。

「…っうぷ……!」
「……はい。取り敢えず燃えにくいし銃弾も抜けないよーにしといたから…」

自分に手渡された真っ黄色に包まれた日記帳は、表面が滑り湯気さえ立てていた。

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