[携帯モード] [URL送信]
悪手持出し空増える
音から察すれば銃の威力はかなりの物、エイサスさんの脛を撃ち抜いた上で銃弾は床に埋まって見えなくなっていた。しかも撃った相手は見えない、つまりは狙撃銃を使う相手で間違い無い。
ウサギ君を弾避けに連れて行く事も出来たがそうしたら相手方も容赦しない。十数歩歩いてから立ち止まり前方に集中する。見える訳では無いが自分を狙ってくれたら幸いだ。

「……っ」

再び銃声が響く。今度は自分の頬を掠めて壁に着弾した。これは警告の意を込めての銃撃だろう。何かしらしないと自分達を何時でも撃ち殺せるのが可能である事の。
どうすれば良いのかについてはウサギ君が一人で来た訳では無いと言葉を信じるなら容易に考えられる。狙撃手がウサギ君の仲間で有りこれまでの流れをスコープ越しか肉眼で覗き見ていたのならば。
相手方が何処に居るか確認出来ていない自分達の方が不利だ。素直にウサギ君を無傷で返した方が良い、今ならまだ間に合う。持っていた銃を床に放り、ゆっくりと両手を挙げる。無抵抗を表しながらさり気無く後方を振り返る。

「……………」
「この耳柔らかいね…思わず引き千切りたくなっちゃうよ」
「脇腹辺りも旨そうだねー…摘まんでも良いかなー?」
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!?」

悪魔二人は彼等らしく、頭の上に立っていた耳を掴んでウサギ君の身体を吊り上げながら服を捲り上げて毛皮に覆われた薄い腹部を触り心地を確かめる様に撫で回して居た。
誰がどの様に見たとしても友好的に済ませられないであろう愉快な光景。エイサスさんはもう撃ち抜かれた傷も治りきっている。何と言うか、最早駄目だ。

「うわっ」

交渉は決裂とばかりに再度の銃声、腹に爪を立てて血が出ない程度に引っ掻いて居たクグニエさんの手が撃ち抜かれて。悪魔だから多分問題は無いだろうが被っていた皮が破れ硬質な中身が露出してしまった。
続いて耳を掴んでいたエイサスさんの肘。寸分の狂いも無く撃ち抜かれウサギ君の身体がへたり込む。取り敢えず手を挙げながらゆっくりと後ろへ歩を進めウサギ君に近付いて。

「今の銃撃、君の仲間がやったのなら開放しよう…その日記帳を下に置いてくれないかな」
「ため口なんて新鮮だね」
「やっ…やなこった!僕にあんな事する奴の何処が良い事するってわひゃあっ!?」

クグニエさんが尻尾を掴むと同時にエイサスさんが背中に指を楽しそうに這わせて居る。話が一向に進む気配が無く、ウサギ君も調子を取り戻しきれず鳴き声を上げる。
再びの銃声が、同じく二発連続で響いた。

[*バック][ネクスト#]

7/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!