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悪に出張って穴穿つ
「君には悪いと思ってるけど、僕達も僕達でやらなきゃいけない事が有るから…何時か其の内埋め合わせが出来たら良いなと毎日じゃないけど君に出会った時は毎回思ってるよ」
「うぐぅ…大体君のスケジュール管理にも問題があるんだよ!何で依頼が有ってから必ず軽く蒸発しちゃうのさー!」
「ぴーぴー五月蝿いねこの兎。生皮剥ぎ取って全身に粗塩擦り込んでやっても良いんだよ?」
「そんな事やりたいなんて結構ロマンチストだねー。その前に泥船に乗っけて毒沼行かせようよー」

以前は自分に服を燃やされ、今現在では悪魔な二人に捕まってしまった。これ程迄にウサギ君は幸薄だったのだろうか。皮をかぶったクグニエさんに羽交い締めにされ恨めしい瞳が此方を見ている。
そんな目をされても自分にその二人は身体を捧げたとしても止める事は出来ない。せめて友人として出来る限り酷い目に遭わない事を祈る。祈るだけだ。
背の高さによって足が軽く宙に浮いている。ばたつかせてはいるが全く効果は無い様だ。万が一足を折り曲げ股間に一撃を受けようがクグニエさんには全く意味が無い。エイサスさんがちょっかいを掛けたがっている、望みも限り無く薄そうだ。

「僕だって一人じゃないんだからねっ!」
「…それが僕等の潔白の証明になるの?」
「恐らくはそうなると思います…あの依頼人が来てくれたら良いんですが」
「無視はやめて!サイ、友達にやる所業じゃないよこれは!ねー!」
「あ、ちょっと失礼します」

少しウサギ君が騒がしく感じたのはそれとして、急に見たくなったのでクグニエさんの顔の皮を少し捲り上げようとしてみる。あーこれは、と言いながらエイサスさんが顔を外してくれて。
確かに中身はクグニエさんで間違い無かった。飛蝗の類の昆虫を無理矢理二足歩行にした様な見覚えのある顔だ。自分の視線を感じてか顎をかちかちと開閉して鳴らしている。不思議な事にウサギ君が静かになって。

「…悪い事はしてないから心配しないで。約束は忘れないでおくから」
「そーそー。俺達は悪人じゃないけどー、意地悪する子にはがぶっといっちゃうかもねー?」

皮を被りながらクグニエさんが呟く。すっかり大人しくなったウサギ君を前に、これからどうするのかを考えてみる。ウサギ君ごと連れて帰り適当な所で放すのが一番だろう。日記の写しでも提出すればイセラさんの罪も幾らか晴れる。恐らくは。
そこで一発の銃声が響いた。隠す気など一切無い様な高らかな音であり、随分と遠くから響いている。エイサスさんがよろけて倒れてしまう。見てみれば片足が撃ち抜かれて居て。

「…頼みました、僕が何とかします」
「ちょ、サイー?」

日記をクグニエさん、ではなくウサギ君に渡して銃を抜き、音がした方向へ歩く。早々と終わるのが理想だったが理想はあくまで頭の中か。何でこうなるのだろう。

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