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再会有して罅伝う
事態は早急に解決して後は帰るばかり。エイサスさん達にこの日記を見せてこの収監所から出て、ついでにイセラさんの見舞いに行ったとしても多分今日中には帰れるだろう。まともに進んだなら。

「さーーーーいーーーーぃ?」
「……………」
「折角の再会だよ?せめて目線ぐ らい合わせよう、ね?ね?お願いだから合わせてよサイ君」
「今は…苦しくて少し……」

何故こんな所でウサギ君と出会ってしまったのだろうか。もう少しまともな場所だったらあの時の埋め合わせも出来るのにこんな所で。出会い頭に胸倉を掴まれながら壁に押し付けられても何も言えない。もっと酷い事をしていた。
状況を察知する必要がある。服装と頭に被ったハットから此処には依頼で来たのが分かる。一々考える必要も無いが明らかにどう見ても自分に対して怒っている。首が緩く締め付けられて呼吸が難しい。股間を蹴り上げて抜けられるがそんな事をしたらいよいよ友達が一人なくなってしまうだろう。

「……ウサギ君…何しに、来たの…?」
「あのさぁ…君のお陰で何故かこの僕が便利屋に入っちゃってさぁ…まあ辛い事よりも楽しかったり悪くないけど…今君に会えただけで十分かな…?」

微笑みを浮かべている顔は何時も通りだが行動が本気で自分を殺しに掛かっている。言葉からするに便利屋で此処には他の便利屋仲間から無理やり誘われ行きたくなかったが自分のお陰で帳消しになったのか。
頭に血が溜まってきた様な感覚が走ると、顔色が変わったのかやっと手を離してくれた。呼吸を整えながらその場に座り込む。見上げてみれば自分が胸元に抱えている日記に明らかに興味を持っている様で。
考えからすると複数人でこの収監所に来ている。ウサギ君自身の迎撃は無しだ、色々思う所は有るが友達には違いない。あくまで自分の中の考えに過ぎないが。

「その日記帳って表紙に書かれた本は何かな…?」
「……好きに思ってくれて構わないけど、僕の命の恩人を救うのに必要な物だ…」
「……冤罪で死刑か何かになってるのかな?」
「…………」
「『赤山羊の悪魔』…ここの襲撃事件の首謀者として街の宗教団体一つ壊滅させた最悪のサイコキラー…新聞でも雑誌でもあんまり取り上げられないのは不思議だけど、まさかねぇ?」

どうやら何もかも見透かされている。便利屋に属していながら情報屋として働いて居るのだろう。せめてもの抵抗として日記に加える力を強める。

「……と、思いきや…僕には不思議な事に件の彼が悪魔とは思えないんだよね。第一に宗教団体が相当に生臭い事。第二にサイの友達に悪い奴はあんまりいないっていう僕の持論…話してくれないかな?」
「報酬を出すなら」
「服代」
「分かった……」

どうやら話すしか無い。と思っていたがその必要すら無くなる。クグニエさんが音も無く、彼の背後から近付いていた。

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あきゅろす。
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