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裏を解いて証得る
入れるかどうか迷った程度の道具を一番最初に使う事になるとは世の中とは不思議な物である。いや、自分の方が幾らか、いや、かなり奇妙な部類に入るのだろう。そうでなければ悪魔とあんなに仲良くなれる筈が無い。
あの国の技術は持ち出しが厳しいらしいので、自分が急拵えで造った魔力ピッキングツール。時間と労力さえあれば大体の封印は解けるが、そもそもそんな事自体犯罪で使う時は有るかどうかで迷った物。万力よりかは使い道が有ると思っての判断だった。
魔法を解く行為は編み物を糸玉に戻す行為に近しい部分が存在する。罠やら何やらに気を付けてばらばらにするだけだ。ベッドの上に日記を置いてフリーにした両手にツールを持ち、構える。

「……………」

一点の物に集中開始。それだけで自分の周りの時間が遅くなった様に感じる。その状態のまま両手を動かし、ツールを封印に突き刺した。あまり触れるのは良くないと僅かに空けた穴の光景を頼りに後解いていくだけだ。
創ったならば逆の事も何となくで可能だ。封印は簡素に、日記の持ち主の魔力に反応して開錠または施錠が可能な魔法だった。お陰で此方も解き易い。魔力を完治したかどうかの方面を弄るだけで、封印は呆気なく解除され解錠された。時間的には十分は経ってないだろう。
こうして開いた他人の日記を堂々と覗き見る。逆から。彼が生きて居る間日記を書いて居たならば当日が最後に書かれた日記である筈だ。生前の几帳面さが出て来て、やはり簡単に見付かった。

『……ー日ー時ーー分 この日記もこれで最後になろうとは中々素晴らしい事だと思う。何せ見開きで丁度終わる事になるのだ、我が人生の最期を飾るこの時二分の一の確率に打ち勝ったとは気分が良い。思わず行書体で書いてしまいたくなる。駄目だ駄目だ、最期まで楷書体で書き抜く事が美しいのだから…おっと、本題に移らなければ。ナナカギの計画通りに事は運んだのだがどうやら計画のカウンターが用意されて居たらしい。騒ぎに乗じて逃げられるのにこの日記を書いて居る私には少し苦手な計画性の無い乱痴気騒ぎだ。出入り口から火を放ってどうするのだろうか。誰も逃がさないのは分かるが帰る時は果たして…おや、そろそろこの部屋の近くに物音が近付いて来た。叫び声から察するに逃げ出そうとした者は殺されて居る様だ。それではこの日記もこれで最期とする…と、思ったが出会った紫の彼は私は逃げてないから殺しはしないらしい。だが断る。どうせ私は死刑囚で問題無い上にこういった混沌には整然な私は特に殺されなければいけないのだ。よって書き上げたら彼に殺して貰うつもりだ。日記も隠して貰う様お願いする事にする。いざさらば。』

最後でこれなのだからと軽く捲ってみればナナカギさんの計画がしっかりと書いてあった。これさえあれば潔白の証明には不安だが十分だろう。シフカさんが来てくれれば手っ取り早く済んだだろうが。

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