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流れるままに人残る
やっと理解して貰えた様だ。自分の顔は影に埋まったまま靴が脱がされて足の裏を擽られている。解っててやってるのだが残念ながら自分はこういった事はあまり感じない。

「ズボン他も脱がして良い?」
「流石に虐殺現場でヤるってのはー…まーアリかな…」
「…………」
「……でも、イセラが危ないから今回は我慢しようか」

悪魔にも流儀は有るのかやっと自分の身体が影から引き抜かれる。途端に感じる重力で頭に血が上り苦しくなる。エイサスさんが手を離せば転がる様にしてちゃんとした床に落ちた。
差し出された靴を履き直しながら正面を見る。確かに曾て自分も数日服役した事の有るあの収監所だ。所々が破壊されているが。クグニエさん以外の悪魔達が多いに頑張ってくれていた。
特に壁も床も目の付く所は大体焦げてしまって居る。そんな中でイセラさんが自分を見付け助けられたのだから良かったと言うべきか。と、何をどうすれば良いのかまだ聞いて居ない。何をどう見ても実行犯は彼等で間違い無いのだが。

「…サイ、ナナカギって奴にこの中で会ったよねー?」
「…はい、確かに会いましたが…」
「だいぶ前にさー、変な奴がやって来たんだよ…そいつの写真を持ってねー…何時かやらかすかもしんないから、そん時には頼むって…」
「……その相手、何時かナナカギさんが脱走を起こすと知ってた…いや、起こす可能性が…?」
「ほら、僕達は色んな意味で匿名性に拘るから…報酬も前払いだったし良い感じの皮もあったし、クグニエを潜らせたって訳」

ナナカギさんは過去を一切語らなかった。件の依頼人は事件を起こすだろうと予感して居た。が、今はそんな事はあまり問題ではない。気になりはするが。
問題なのは彼等の依頼が正当である事の証明である。ナナカギさんが脱走計画を練って居た事の証明。何かしらの計画が書かれた紙片だとか、そういった物を見付ける必要がある。
必要なのは証拠である。何もかも燃える物は全て焼き尽くされてしまった様な場所で。彼の不在のせいで自分が此処に来る羽目になったイセラさんのお陰で燃えに燃えた収監所の中で。

「……許可は取ってるから好き放題探してね。僕達は邪魔にならない様にその辺ぶらぶらしてるから」
「君なら出来るって信じてるからこその行動だからねー…はい、ココに入ってた囚人のリスト。じゃーねー…」

分厚い書類を手渡されて、悪魔な二人は去って行く。探し出さなければ命が危ないらしいイセラさんが紛れも無く死刑になる。やり遂げなければいけない。曾て自分を救われた恩義を今返さなければ。

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あきゅろす。
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