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勧誘は甘美なれど追跡有るもの
「ええ、大丈夫ですから、取り敢えずは五体満足です。宝石盤は美術館に送られてしまいました、申し訳有りません。いえ、守ったんですが僕を保護した側が早合点しまして。それからもう暫くは帰れそうに有りませんので…皆に宜しくお願いします」

上の服は無くなっているが、グリッドマン家に連絡。エンフィさんに状況を説明、反論は受け付けずに通信を切って。これで後腐れは大層あるだろうけども前の様な事は怒らないだろう。
マフラーも無い。装飾銃も解析が終わったとしても自分が取り戻す方法は無い。この国から出てしまえば良いのだかやる事が出来た。父親の軌跡を辿る。数年振りに見付ける事が出来たのだから。
自分が彼女にした約束は、旅行者Xに発明品を潰された相手達と会う機会。勿論時間が掛かるのだろう。
つまり、何とかしてホテル等仮宿が必要になってしまったのだが、彼女が此方を見る瞳が輝いて居る。逃げられたとしても行き場所がない、つまりは。

「という訳で、何処か宿泊施設を教えて下さい」
「ココよ」
「代金は」
「タダよ!その代わりちょーっと働いて貰わないといけないけど…」
「…………」

上の服を返して貰わないといけない、自分に選択権はあまり見当たらないのだと気付いてはいた。肩に爪が食い込んで痛い。それも分かっていて。寧ろ父親以外も見付かるかもしれない。

「僕なんかで良かったら…それから打診の方、よろしくお願いしますね」
「…よぉしっ!短い間だろうけど宜しくね!ほんとに!」

竜人と人間との力の差なのか、自分の手を握り締める力はかなり強くてやはり爪が食い込んで痛い。わざとじゃなくて元々力が強いのだろうか。

「…………」

それより問題なのは父親の出した弊害の方だ。別に尻拭いをするつもりは存在しないが、自分達以外であんな事をしてしまったらどれだけの傷を負ってしまうのか。
前向きに考える。世界一の高度を誇る技術を得られる機会なのだと。帰って来た時の事はなるべく考えない、今を実入り有る時間を過ごす。明日の事は誰にも分からないのだから。
例えこの国が翌日実に安直な理由で他国との戦争に巻き込まれている可能性も、少ないものの間違い無く存在しているのだから。その時に自分達は。
軌跡で父親が何処に居るのか、せめて一筋でも見付かる事を祈る。野放しにしては危険だ。今の自分と同じく。

【第二十三巻 終】

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