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技術は天稟なれど偉大なるもの
どの位経ったのだろうか、どれだけ高度な技術があろうとも時計が無ければ分からないまま時間をどうにか潰しかけて居た頃、漸く彼女が戻ってきた。先程よりも少しやつれた顔で。早過ぎやしないか。
手元に震えが見られるのは今までの間延々細かな作業を続けていて、そして早速挫折してしまったのだろう。あの捕集器がそこまでの物だったとは。シューゴに真意を聞いてみたくなる。

「…ちょっとで良いから、愚痴を零させてくれない?」
「どうぞ」
「あのね、構造は分かったの。今じゃこの国では手よりも精密な動作が出来る機械でこんな変換器とか造ってるんだけど。これの構造機械でも出来ないくらい細かいの。そんでもって頑張って…ここまでやってやっと二割弱…あぁぁぁぁもうっ!」

自分に当たられても何も起きない上に誰も得をしないのだが、言ったとしても彼女を止められはしない。無意味な時間が延々と続く。彼女はぐったりと床に倒れ込んでいる。初対面の自分に出来る事とはそんなに無い気がして。

「これもうあの旅行者Xと一緒よ…」
「…旅行者Xとは一体?」
「半年ぐらい前にふらっと来て、私達国有数の技術者の発明品を呆気なく改良しちゃった化物よ!それも一週間の滞在で八つもね!」
「…その、写真か何か有りますか?」

ええ勿論よ、あん畜生がこんな顔してると思わないでしょうね、と愚痴混じりに再度部屋から出て行き、戻って来て手に持っていた写真を手渡された。父親だった。




「……で、本当に出来るかもしれないのね?」
「もしかしたらですけど…万が一出来たなら、僕の頼みを聞いて下さい…それから上の服、返して下さい」
「あぁ、今洗濯中だから…寒いのならこれを」

そして膝掛けを渡された。寒くは無いが主張してしまったので掛けざるを得ない。だいぶ座り心地が良い椅子に座っている自分の前には奇妙な機材。周りにも何人かいるが全員自分の姿を見ている。
ルーペを覗いて、左右に取り付けられたピンセットにも似た極小のアームを操作して、魔力の源となる物質に魔法を直に組み立てる装置。側には捕集器内を構成していた魔法の解析図。非対称でどう見ても安定しない構造だ。自然には絶対存在しないような形で直立する木と言えば良いだろうか。

「解析して見た結果、入り組んでる上属性を三種類使ってしかも馬鹿みたいに安定しない構造だから…少しでも進んだら貴方を認め…」

根元は集めた魔力を保管する魔法。次には魔力を一定の力に増幅させ、末端にて魔力を集められる様になっている。まずは根元から。

「第一直接やるのも最近じゃ入力してくれた通りに機械がやってくれるのよ。こんなに細かいのも多分どうにか……」
「……………」

昔の事を思い出す。魔法は使えなかったから初めてやった時には余計に新鮮に感じていた。あの時と比べると楽だ。色々と切羽詰まって居たから。

「出来ました」
「えっ」

ルーペの奥には、解析図通りの魔法が自分の手により組まれている。十割がた完成したと言っていいのだろう。

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あきゅろす。
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