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誤解は拡散あれど誤認あるもの
「さて、自分がどういう立場に居るのか、理解出来たかな?」
「はい、ものすごく理解出来ました…貴女が嘘を付いてなかったらですが」

今しがた聞いた話を纏めると、自分は気を失って倒れ伏していた所を偶然助け出された。試験飛行中の小型飛行艇によって。燃料の都合上拾った後に元々の目的地へと直帰。
世界一だと謳われる魔法工学の開発が徹底的に薦められ見合った結果を出し続けている国だった。曰く飛行ルートは十数パターンから適当に選んだらしくある意味奇跡に近かった様だ。
眠っていた最中の心地良さの正体は全自動治癒装置。開発が進んでいたがこの国の中でしか流通して居ない代物との事。回復魔法を重ねた膜が全身を包み込む仕組みで、全身隈無く治療してくれる。お陰で首筋の日焼けも節々の痛みもなくなっていた。
自分を助けてくれた相手達が気になったのは、手元にあった宝石盤である。本来なら美術館に一つしか存在しないのに、それに二人は実際に美術館の中で観た事があった。似ているからと成分解析に掛けた結果、紛れも無く本物だと結果が。
そして問答無用で美術館側に宝石盤を送り返し。自分は国宝どころかこの世界の宝と言ってもおかしくない様な美術品を大胆にも盗み去ったが途中でくたばりかけた哀れな泥棒として取り扱われる事になっているらしい。

「この国の犯罪者の取り扱い方はえげつないわよ?資源を取る為に少ない休憩時間、長ったらしい労働時間、飢えた男達」
「…何とか弁解出来たら嬉しいんですけどね」
「それはだーめ。何せ現行犯だもの。私の仲間達は貴方の手元に宝石盤が有るのをはっきり見たし写真だって撮ってるんだもの。百個の言葉を並べたって一枚の写真はそれより詳しく語れるのよ?」
「…………」

頭から伸びた鬣が、さながら髪の様になっている竜人の女性は自分の目の前で楽しそうに笑う。頭に着けているゴーグルはバンド部分に細かな傷が無数について年季を感じさせて、彼女が工学に関わっていると解って。

「…でも、貴方が面白そうな物を持ってるのは運が良かったわね?あれが無かったら直行で裁判所に差し出してたわ、写真付きで」

捕集器も銃もなし。今度こそ本気で身一つである。おまけに自分の上半身の服を脱がした誰かが居る。
彼女がこんなに余裕を持っているのも、対策が施されて居るから。せめてマフラーぐらいは返して貰った方が良かったか。

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