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生命は終了なれど静観あるもの
変な浮遊感と勿論全能感とが自分の中で主張している。無意識の内に空を飛んでしまったのかと思ったがどうやら此処は夢の中らしい。明るい色に彩られた比較的心地良い夢である。
このまま自分の目が覚める事は無いのではないだろうか。浮遊感に合わせてこのまま自分の生命が飛んで行ってしまいそうな。もうすぐ自分は死んでしまうのか。
夢から覚める方法は今の所時間経過のみだ、しかしこの夢に終わりは無い気がする。永遠に夢の中で過ごしたかと思えば、ふと何もかもが終わる。今頭の中であっても随分静かな最期だった。

「…………」

眠る様に死ぬ、眠りの最中に死んでしまうとは中々緩やかな物だ。レザラクさんから借りて読んだ本の中でも引用されるのが良く分かる。本来解ってはいけないもの、それも生涯に一度しか味わえないのだから。
既に理解を得ているからか夢の中は全く変化が無い。深層心理が露わになると聞いた事があるが不変のままである。これは即ち、そこまで頭が回っていない事の現れか。嫌な所で死に近付いて居る事が解る。残念ながらこれが現実で。
不思議と後悔や未練はそれ程に湧き上がってこなかった。湧いたとしても今やどうする事も出来ないという現実の方を飲み込めていた。これを誰かに話したらそれはおかしいだろうと指摘が飛ぶ所だが生憎話せる相手は此処に居ない。

「……………」

ここに来て浮遊感の方が強くなって来たのは良い事か悪い事か。と思っていたら全能感が盛り返して来てしまった。今はもうどうにもならない、自分に出来るのは今を受け入れる事だけ。本当にそれだけ。自分に言い聞かせないと。
色に溢れていた風景が段々色を失い白黒の世界へと変わっていく。手足の末端から夢の空間に溶けて行く様な、そこに痛みも苦しみも無い、寧ろ心地良さが伝わって来た。比較的穏やかな終わり方で締めて良いのか。

「……………」

そして自分は、目が覚めた。即刻理解、今まで死を受け入れようとしていたのにその努力が完全に無駄になってしまった、全く今日は散々だ。いや、グリッドマン家に関わってから散々だ。自分はどれだけ眠っていたか、
それ以前に全く見覚えの無い場所で全く見覚えの無い機械が周りを取り囲んでいる。魔力が流れているからか光に覆われていて籠の中の鳥の様な気分だ。そして心地が良い。
銃は無し、捕集器無し、全身の痛み無し、宝石盤入りのガラス箱辺りには見付からず。努力も無駄になった、やはり散々な事だ。

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あきゅろす。
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