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節々は負傷なれど枯渇あるもの
これからどうするべきか、少し離れ過ぎてしまったから誰か助けにくるという可能性も低いだろう。動けるには動ける筈だが腰を強打してしまった今では相当な制限がされる。久々に連射したからか指も痛んでいて。
両手に力を込めて立ち上がる事すらも出来ない。地面に膝を着いた状態が精一杯で、這って進むのが今唯一出来る方法だろうか。トキザにマフラーは返して貰うべきだった。
草むらは這いずって進んでも特に痛みも感じる事無く、匍匐前進には最適の立地。そもそもそんな動作とは自分は全く持って無関係だったが、数十メートル程で早速疲れてきた事から予想以上に体力を使うのか自分の体力が無くなったのかのどちらかと解った。

「…………」

ふと思い出して銃の予備の弾を込め直す。まだ日も出て居ない夜中だからこそ音を出すのは効果的かもしれない。というか日が登ったら忽ちに自分の存在が露わになってしまう、若しくは干上がる。シビアな状態に立たされていると解って。
だからと言えどトキザ達を恨んだりなんかはしない。そんな気持ち生まれてこの方抱いた事はあまり無い。単に親譲りか、育った場所が幸運だったのか。

「…………」

日が登ってきた途端に、一気に暑さを感じる。匍匐前進による運動。草むらも爽やかさすら感じる光を浴びて徐々に熱を帯び始め合わせて自分は汗を掻く。本格的に危ないがまだ背中に痛みを感じて立って歩く事は出来ないままで。
虫や小さめの爬虫類等が進行方向に目立つ様になってきた。蛇が出て来ないだけ幸いであるが、地面に着けっ放しだった服の袖が擦り切れ始めている。もっと丈夫なのを買うべきだったか、それ以上の問題は自分の体力。空腹感と疲労感と喉の渇きと汗が目に染みる。
素直に木陰に隠れて皆が助けに来るまで待つべきだったのだろうか、しかしエンフィさんには怒られるだろう。

「…」

動けない。それだけで今自分がどれだけ追い込まれているのか楽に理解する事が出来る。空腹過ぎて腹も鳴らない、喉が乾いて声すら出せない、体力の残りは指しかまともに動かせなくなっている程。後頭部が熱くてそのねつが内側に籠っている様な。
誰のせいかと言えば先ずは自分の責任だ。自分の責任だろうか。自分の責任か。自分の、そろそろ意識すら朦朧としてきている。目の前に生えている草もぼんやりとした緑色としか見えていない。
目蓋を開くのすら力が必要になっていた。意識していないと閉じてしまうとは、本気の本気で宜しくない、では絶対に済まされない。
視界が無くなった、単に目蓋すら開かなくなっただけの事。背中が暖かい、温感にすら問題が出てきただけの事。全能感はこんな時でも主張してきた。自分ごと黙らせた。いや、それは一番やってはならない事で、

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