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感覚は可能なれど程度あるもの
最後の最後に残った隠し技は、それはそれは酷く外道で醜悪で卑劣で全能で無限で、かつて誰も使った事が無いであろう、自分が使うのが世界で初めてになるかもしれない物である。しかし使うのは駄目だ。
昔ながらの親友だから多少の事は許されるとしてもこれだけは多少ではなく最早過剰だと言っても構わないに違いない、だからこそ使ってはいけない、元々使うべきではない、世界的な規模から考えても、自分の発想もつくづくとんでもない物だ。

「……サーイー?昔ながらの付き合いだから何となく分かるんだけど、親友だからってかなり外道だか非道だか卑劣だか醜悪な事やろうとしてない?」
「……例えば…僕が、どんな事をすると、思ってるのかな…?」
「実は両腕を機械に改造してて、必殺のロケットパンチで僕を爆発させるとか」
「……何でかな…?」
「それはもう、前例があるから…」

痛い所を突かれたが、遠回しにトキザ自身の一番深い傷を抉り返しているので反論出来ない。迂闊に口出ししたならば親友だからで済ませる事では無いから。
今ならロケットパンチもそれ以上の事だって間違いなく出来てトキザを爆散どころか細胞単位での分解も十二分に可能だろうが、だから出来たとしてもそれをやってはいけない。全能感が半端無いのだけれど。
トキザの足が止められたのは良い機会だが、弾も何もかも無い。自分は今現在何も出来ないのだと言い聞かせないと駄目だ、思わず自分の無意識の内に繰り出してしまいそうになっている。

「…もしも今ここで僕が、このまま飛んで帰ったらどうなるか分かる?」
「…新聞屋に驚かれる」
「案外皆こんな早朝に上を見上げたりしないから大丈夫だって。君が何をするのかが気になってるんだけどね?」
「…言っておくけど、今の自分には、何も出来ない」
「…悪いけど僕こそが君のデンジャーっぷりを親の次に理解していると自負している、だからこの胸騒ぎは絶対間違いじゃないって思う。多分。恐らく…もしかしたら…ひょっとしたらね…だから」

軽くガラス箱が放られて、緩やかな曲線を描きながら自分の手元にまで浮いてきて。衝撃を完全に殺して、自分はどうにかこうにか宝石盤を取り戻せた。と、信じて良いのだろうか。
トキザは微笑んだままだ。昔自分と遊んで居た時、少し自分から一線を越えかけた時と同じ表情。察してくれてありがたいのも確かである。

「今回はこういう事で頼むね…あ、調べ尽くしてから返すから」
「ああ、うん…また……」

今度は振り返らずに、トキザは飛んで去って行った。果たして何日で銃とマフラーが返って来るのだろうか。装飾銃の解析が早めに終わる事を祈る。

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あきゅろす。
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