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対策は万全なれど体制あるもの
散々その場しのぎの思考と行動とを巡らせきったとしても報われるとは限らない。こうした努力が一気に無駄になってしまうとは中々辛い物がある。街の皆にも同情が。

「さーて、これでミッションコンプリートっと…サイ、何か言いたい事はあるかな?」
「…僕と、ハスケイヴの事について、知ってた…?」

一言も言葉を放ちたくは無い苦しさだが、尋ねなければいけない。最後の賭けと言うのか、多分トキザは話を効いてくれる筈だから。
ガラス箱は見せ付けられる様にトキザの手の上にふわふわと浮いている。魔法の影響による物なら、箱よりも肉体の方を撃たなければならないのだろう。
肝心の本人は先程まではとてもとても愉快そうな薄ら笑いを浮かべていたが、自分の声で途端に疑問を抱いた様な。これで一先ずは良し、足を止める事が出来た。

「…どゆこと?まさか生き別れの兄弟だったってのはアリだからね?そんな時には僕おもっくそ口を滑らせるかも…」
「……昔、聞いた事がある……んだ、僕の曾祖父…曽爺ちゃんの時代に…はぁ……やたらと不幸が続いたって……それで思い切って…名字を変え…たって」
「苦しそうなのに説明ご苦労様。つまるところ、スロードからロウンスナンバーに?」
「その通り…で……僕の父さんの兄さん、僕の…っ……叔父が町から出ている…つまり、そう言う事」
「ふーん、通りで酒強いし変な所で身体を張るし手先が器用な訳だ」

二挺目の銃はポケットに収めたまま出さないで居た。従兄弟となっていたハスケイヴが気付かなかったのかどうかは今は良い、狙ったは膝と腕と肩と脇腹と脛と靴。

「言いたい事は、それ、だけ…だったん、だけど……」
「…それで、当てたい事はこれだった訳だね、サイ?」

読まれていたのでは無かった、普段から自衛の為にそうしていたのだろう。にこやかに笑いっ放しのトキザに向かって放った弾丸は当たる寸前で空中に留まって、虚しく地面に向かって落ちてしまっていた。

「君の魔法は、随分と…細かい調整が出来るんだね…例えば、弾丸の…それぐらいの速さを持った物体を当たらない様に……」
「大正解っ。景品としてこの言葉を何回あげたか分かんないけど授けようっ。物事は出来得る限り精密に…以上っ」

これで終わりと言うかの如く自分に背を向けて帰ろうとしている。悠々と歩いているがその内空を飛んでしまうに違い無く、風亭からハスケイヴも無事で。
捕集器には何も残ってない。銃弾の残りも。マフラーも装飾銃も何もかも無いったら無い。唯一頭の中の全能感だけが、際立って強くなり始めた。

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あきゅろす。
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