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行動は有益なれど複数あるもの
持ち得る全力を出し切らなければ、首の骨等その他諸々をへし折ってお陀仏だ。宝石盤を道連れに出来るのなら構わないという相手も居るだろうが自分は御免だ。
ガラス箱を軽く動かす。宝石盤は動かない。何かしら粘度の高い物でガラス箱の中に粗方固定されている状態だ。これは良い。あまり気遣う事無く無茶が出来る。
捕集器を起動、第一に落下速度の軽減。何時もは霧状に放つ監視用魔法を傘状に放つ。浮遊感が出来たがまだまだだ、無数の星を内側に放って内側に貼り付ける。ばらけかけていた擬似の落下傘が完全に一枚の幕になった、背中が引っ張られる。

「…………」

暫くすると星が剥がれてまた翼が霧散し始める、本来ならば生き物相手に作り上げた魔法なのだからそれが当然、緩和されていた落下速度が再び上昇し始める、未だだ、今度は敢えて霧を自分の下に移動させ防護幕を展開。
自分の魔法を吸収させて身体強化、捕集器には限界まで使い果たされて貰う。防御幕を展開させ続ける、地面に落ちるまで目測残りおおよそ三秒。

「…………」

走馬灯は見えない、見てはいけない。残り二秒半で再び霧を固めて星を貼り付けて落下傘を作る。身体が引っ張られて残り時間はまだ二秒半のまま、防護幕を張ったままガラス箱をしっかりと抱えて。
赤子の様に身体を丸めて、残り一秒。背の低い草むらに落ちるのは幸運だろう、一秒半、一秒、半秒、上を見てみれば綺麗には見えない雲に覆われた空、

「っ」

背中から衝撃が走る、星が剥がれて霧は霧に戻って空中にばらまかれて行くのが揺れる視界の中見えて、本筋の痛みは少し遅れてやって来た。
だいぶ衝撃は緩和したつもりだったが、何分高さがあった。承知の上だが背中で受けた筈の痛みや痺れが足裏にまで響いてしまうとは。空を仰いでいた体勢を四つん這いに変え、唾液だか胃液だかを口から吐き出す。少しもましにならない。折れては居ないが動くと痛みが走る。幸か不幸か。
ガラス箱の中身は至って無事である。腰を痛めた甲斐が有った。今回の自分は、我ながら運が良かったのだと思う。下手をしたら死んでいたのだから五体満足の時点で。

「…凄いね、サイ。思わず嬉し涙を流そうかなと脳内会議開いちゃったい」
「…………」

欲を言うのなら、もう少し運には頑張って欲しかったなと思う。せめてトキザがガラス箱を手の中で弄ぶのを止めさせて欲しい。
顔が煤で汚れてもいなかった、完全に無傷のまま自分の隣に降り立って、傍若無人にガラス箱をひったくられてしまった。

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