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空中は地無なれど発想あるもの
今現在の状況を改めて整理する。自分は空を飛んでいる。そしてハスケイヴが脚を首に絡ませて無理やり相乗りしている状態である。更に彼は手を伸ばしているのがどうにか分かる。

「とったぁっ!」
「………!」

今ハスケイヴがガラス箱を掴んだ。同時に一気に急上昇する。遠くのトキザよりも今間近に居るハスケイヴを。驚いて脚が震えたのが解る、そして自分を離さないままだ。
爆煙を上げている元駆動車が掌大の大きさに見える様になって、指の爪程の大きさになり、外気の寒さと風の強さが気になり始める。雲が近い。万が一落ちてしまったらバラバラになってしまう様な高さ。流石に持って落ちて着地したとして宝石盤は無事ではあるまい。

「とんでもないですねぇー!突入時には雲の上まで登りましたが、流石にこの高さじゃ降りられませーん!」
「けほ…っ」

通った声で叫びながら遊ぶ様に自分の首が締められる。呼吸は出来るが苦しい。恐らく自分が彼を降り落とせないのだと思っているからなのだろう。しかし、今の自分なら。
両腕は自由、ポケットの中には銃が入って居ない。居ない。ちゃんと収まっていた筈なのだが、と、ハスケイヴがガラス箱の小脇に抱えていた。抜かれている。

「この距離で撃たれるのは面白いですが確実にヤラれますからねー…ちょっとゴメンなさいっ」
「…それなら、僕もちょっと御免なさい」

脚がマフラーに当たって居ないのは果たして幸か不幸か。巻き付けていたマフラーを解いて、ハスケイヴの足首に巻き付ければ重力に従い自分の身体は下へと落ちる。念入りに、入念に。彼一人では解けない様に。
そしてマフラーから手を離した。設定は緩やかに上昇を続けるだけ。自分には重力がある。下への力を乗せてガラス箱をもぎ取り、離さない様に両手でしっかりと抱え込んで、後は堕ちるだけである。
えぇぇぇ、とハスケイヴの声が徐々に小さくなるのが聞こえる。それ程までに加速してしまっているのか、風が吹き付けて、自分が蒔いた種だが眼も開けられない耳が痛い。何をしたらこの状態で助かるのかそれが課題、無回答は即死か五体不満足か。

「…………」

頭の中ではこのまま自分は無傷で着地出来る上にマフラーも銃も取り返す事が出来てついでにトキザに手紙を送れるのだと、全能感が言っているがそれでは駄目なのだ。
そして長らく色々な事をしてきた自分の頭は、ベストな対処を打ち出した。

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あきゅろす。
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