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方法は奇抜なれど用意あるもの
残念な事に泥棒をするのには良い夜なのだろう。厚い雲に覆い尽くされて大分低い位置にある月の光も朧気にしか見えて居ない。まだ陽も登っていない。涼しいとは言い難くむしろ寒いぐらいだ。
勿論彼の方は此処よりも遥かに寒い筈だ。自分の予想が当たってくれていたらの話だが。今自分達が居るのは屋根の上。殆ど真下には宝石盤が厳重に保管されている部屋。時刻は予告上に記されていた時間の十数分前。

「サーイー!」
「なーにー?」
「本当に君を信じて良いのかなー!」
「僕じゃなくて相手方が来るのを信じて欲しいんだけどー」
「でもさぁ、上からってのは流石に無いんじゃないかなー!」

屋根から二本のワイヤーを吊り下げ木の板を吊るした簡易足場、その上にライフル銃を上に掲げたロッシュが乗っている。どちらもグリッドマン家からの借り物であるがロッシュにはどちらも問題無し。今まで眠っていたから眠気も問題無い。全快だ。
部屋の中にはエンフィさん、扉の前にはアケミチさんが配備されている筈である。これまた借り物だが耳に掛けられる無線通信機も実装済み、守りにしては完璧と言っていいだろう。ロッシュは信じられないらしいが。
感知魔法から何やらで最早要塞と化している屋敷と宝石盤との最短距離は上しか無いのだ。それも視認出来ない程に高高度から突っ込んでしまえば。アケミチさんから何か悪い物でも食べたのかと喉奥に指を突っ込まれかけたがどうにか納得してくれて。

「うぅ、それにしても寒いね…何で泥棒なんか来るんだよ、まともな仕事しながら籠ってくれたら良いのにねー」
「…多分、盛大なお節介なんだと思うよ。後で証明書と一緒に送り返されて来るんじゃないかな…」

残り数分。雲が切れて月が見えるが、もう全く明るくはない。

「サイ、当たってるかどうかはまあ良いとして、何でここまで予測が出来たの?」
「…正直に言うと、僕の友達が泥棒側に噛んでると思うんだ。それで、友達としてはどうしたら良いと思う?」
「…え、えぇぇぇっ!?」

驚いたロッシュを見ているうちにも時間は過ぎる。そろそろ用意を本格的に。

「やっぱりさ、友達なら全力で止めなくちゃダメなんじゃないかな?殴り飛ばしてでも」
「…そうだよね。やっぱり、友達なら、ね……」

これでどれだけの事に及ぼうが後腐れ無し、残り一分を切った。さて、全力でやるとしよう。残り数十秒。

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