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来訪者は洞察して
無理矢理寝ようと目蓋を閉じた。
ザラリとしたあの虎人の舌の感触を思い出した。

「…………」
眠気が全く無い。
こんな時は頭の中で羊を数えると眠れる。1、2、3……

カチカチと時計の針が進む音がいやに耳に障る。

…52、53、54……

…245、246、247……

……駄目だ。
鮮明に覚えてしまっているから。

扉を開けると大きな手で口を塞がれ、力一杯に首を絞められて死を覚悟する。
首を離されたのはいいけど後ろに回って手がまた口を塞いで、あちこち探られる。
服の中に手がかりかりかりかりと爪で幾筋もの線を肌に

「…っ………」
また、疼いた。
少しばかり涙も出てきた。
眠れない。仮に眠れたとしても恐らく悪夢を見る。
そうだ、水か何かを飲んで落ち着こう。
もしくはトイレだ。心理学的に落ち着く場所らしいから。
のそのそとベッドから身を起こして、ドアへと向かう。
そしてドアノブに手を掛け押す……違った、引いて開ける。

「…おや、まだ起きているようだね」
「!…っ……」
扉を開ければ人型が立っていた。
そこでまた頭が白く

……………
「……フーガさん…?」
薄明かりに照らされているのは赤い羽毛と肉体、後際どい下着一枚。
こんな服装でフーガさんとは別人ならばここから即刻出ていきたい。

「いや、ね。少し忘れていた事があってね…」
もし自分が寝ていたなら叩き起こされていたのだろうか。明日の朝に言えばいいのに…
「…それで、今夜私に抱かれてみるかい?」
……ああ、それか。
約束を守る良い人という事はよく解る。ただし色々……だが。
「……止めておきます。」
「そうか、残念だねぇ…」
そして自分はドアを閉めようとした。

なのに。何で部屋に入り込むんだろう。もう用件は終わった筈なんですが。

「ちょっとゴメンよ…」
ぎゅう。オノマトペならそんな感じで、自分の胸元を、蚯蚓腫れを押してきた。
「っ……何…す…っ」
疼いた、いや、寧ろ痛んだ。
その痛みで顔が歪んだ。
「ふむぅ……ちょっと見せてくれる?」
有無を言わさず上の服を捲り上げられた。あの時みたいに、外気に触れて更に疼いて
そういえば涙も出ていたんだった。もう、鮮明に浮かんできた。早く忘れたい記憶が。

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あきゅろす。
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