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不変回帰「速度変化」
湿っぽさと日差しの暑さを感じながら戻って扉を開けば、フーガさんにいきなり抱き締められて迎えられた。今日は白いブーメランパンツ一枚。手触りも服装も優しさも相変わらずである。
そして早速二人に絡まれているアケミチさん。やった行為に関しては殆どそちらが悪いので幸運はやはり祈らない。きっちりと果たして欲しい。多少の流血は容認する。
時間的にはまだ朝なのだが、所長の姿は見えない。ロッシュは居るのに、まだ寝室で眠っているとは。何時もなら机に座り眠って居るのに。それも誰にでもバレる様に。

「…すいませんが、所長は今何処に居ますか?それから防寒具を脱ぐまで少し離れて下さい」
「んー?通りでサイ君の感触がしにくいなって思ったよ…所長は出掛けてるね…どうだい、今夜は私と…」

柔らかく断ってから防寒具を脱ぎ捨て、地下の鍛錬場へと向かう。天井に貼り付いているアケミチさんにヤクトさんとレザラクさんが色々投げて撃ち落そうとしているが昆虫の様に素早く避けていて。
罵倒を共に外れたダンベルが地面に落ちる重い音を聞きながら、装飾銃でなくごく普通の銃に模擬弾を詰め直す。万が一人に当てても殺傷力は無い物。股間や目に命中したら只事では無いが、硝子を破る力も無い。

「サイ、何をしている!どうにかしてこの二人を止めてくれ、お互い合意の上だ!本当に!」
「知るか!朝帰りの時点で許せねぇんだよ!」
「サイ、撃ち落としてやれ!出来ればケツか前に当てろ!」
「…………」

昆虫が壁を這い回る、時には天井すらも。動きを読まないと中々当てられない。自分も経験が有る、水の中で何かを掴む様に避けるのだから。今となっては、どんな虫でも叩き潰せる、それも一撃でおそらくは。
あの大会までは、ラーツに顔を砕かれる前はそれなりの下準備が必要だったのに、今では目を凝らすだけで集中する事が出来てしまう。次にアケミチさんがどの様に動くのか、完全な理解が可能だった。後は引き金を引いて、模擬弾を射出して。速度は本物より劣るが当たると痛い。

「ちょっ」

一発目が放たれるのを見てから身体をくねらせ天井から壁へと跳び移ろうと、だけど二発目が太腿に命中、一発目も結局はこめかみに当たってしまった。痛そうに顔を歪めながらもまだ壁から離れず、と、ヤクトさんの投げた案山子が命中して。

「サイ!ぐぁっ!同意の上ってのぁっ!止めろぉっ」
「…………」

朝帰りはレンカさんの、突き詰めれば自分のせいだ。しかし行為に及んだのはアケミチさん側からで、二人は何となく察したのだろう。お互い殴り合った二人が、今度は協力して一人を殴っている。通過儀礼、か。

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