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帰還飛行「海上雲下」
最後当たりは味が濃かったが、豪華かつ一風変わった朝食を終えて盛大に見送られて。後は帰るだけだ。レンカさんは早々と自前の飛行器機で帰って行った。前に見た時よりも早くなって居た。
帰りはどうするか。再びアケミチさんと相乗りである。一人用のマフラーに二人でくるまって。おまけに朝帰りに起きた時から消える事の無いアケミチさんの微笑んだ顔。何があったのかを隠す気は一切無いらしかった。

「左に四十三度!ところでサイ!」
「解りました、そして何でしょうか」
「皆を差し引いていきなし俺の実家に招待したが、その辺お前の中ではどう思ってる?」
「最初はこうなるとは思いもしませんでしたが、実際そうなってしまいましたし一日過ごしたのなら僕の反論もあまり信じて貰えないでしょうね…向こう数日は気を付けた方が良いかと思います」

そうか、と楽しそうに呟いた。アケミチさんは自分の下に、地図とコンパスを見ながら必死で進行方向を調整している。微笑みを絶やさぬまま。中々に余裕があった。
行きと変わらず飛んでいるのは雲の上で。三人の時よりも手狭では無いがラーツが防寒具を忘れて居たから荷物は凡そ五割増し。向こうに戻ったら着払いで送り付ける事にする。寒くは無いが日差しが熱い。妙な感覚だ。
誰も周りには居ない。その代わり雲が充満している。感触は無く触れるだけ身体を湿らせて来るぼんやりとした物ばかり。後は太陽。

「なぁ、サイ!雲の下に降りて見ないか?」
「変にリスクを踏みたくは有りませんが?」
「今下には海が広がってるぞ?さぞや美しい景色が見れると思わないか?」
「………分かりました」

少し考えた末、好奇心の方が打ち勝った。昨日も今日も自分は移動役に徹したのだから、それに昨日少し割に合わない羽目になったのだからせめてこれくらいは。
ごく薄く見える白雲を突き抜けて、雲の下へと。其処には確かに海が広がっていた。人気は疎らに存在している。船は見る限りは二艘だけ。後は見渡す限り自分達の下方には、海が広がっていた。
陽光は薄雲に遮られていても柔らかな光を送り届けそれが海に反射していて、全体的に輝いて見える。寄せては返す波。あとは延々と海。

「……昔は竜人か鳥人以外は、こんな光景見られなかったんだよなぁ…」
「今では飛空艇が発明されましたから」
「だが個人では中々見れなかったんだろうなぁ…右に二十度頼む」

暫く下に青色を見届け、再度上昇して雲の白色に戻る。方向転換をしながら、自分達は元の場所へと帰るだけであって。本当にそれだけで済むのかどうか。
少なくともアケミチさんは、暫くあまり良くは無い目に遭うのだろう。

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