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必要始末「夢中回答」
「…落ち着いたか?」
「あっ…ん…はい、平気です……」

焚いていた香の匂いもしない。昂ぶっていた身体も急速に冷めている。前に味わった時よりも余韻が残らなかった。意識の方は飛びかけたどころか完全に飛んでいたのだと断言出来るが。

「…自分で後始末出来るか?」
「結構疲れてますが、恐らくは」
「ちっ。それなら行くか…歩けるよな」
「…………」

一切隠そうとしなかった舌打ち。もしも自分の足腰が立たなくなるまでやられていたらどれ程の事になっていたのか。想像が追い付くまで体力が残っていない。後は早々と眠るだけだ。本当にそれだけであって欲しい。
背中から離れたアケミチさんは実に満足気な表情をしていた。股間も盛り上がっておらず、代わりに自分の中から濃いめのそれが溢れ掛かっている。全部出し切ったのか。

「…まだ欲しいのか?」
「いいえ」
「遠慮しなくて良い、色々と形や大きさも選べ」
「いいえ」




脱力感。一仕事と言おうか、正確には一勝負か一夜か。終えた後の疲労の籠る身体を温いどころか低温火傷寸然の煮え滾る湯で洗い流し固まるからと下半身は冷水で流され自分の温感が迷っていたのを感じて。
当たり前の如くアケミチさんが悪戯を仕掛け何時もは中々見れない顔を見られたのを吉と捉えるかその顔を見るまでに味わった苦労から凶と捉えるか。
自分は涎の染みが付きたての枕に後頭部を預け、自分の先走りが少し染みを作って居る布団に身体を預けて眠っている。この布団の洗濯係は驚く上自分の心証は絶対的に悪くなる。問われたら襲われたと素直に打ち明けるとして。

「…………」

夢を夢と認識する事は可能である。比較的頭の中は大雑把に夢を作っているのだから新聞等細かな点を見てしまえば。その違和感に気付いて夢なのだと確固たる意思を持てば。後は簡単だ。
しかし慣れるまでに時間が掛かるとも聞いていた。それなりの訓練を積まなければ夢は夢のままだと。朝起きた時に朧気な光景を覚えているだけだと。ならば自分は、何なのだろう。
前に見た夢には、自分は出て来たものの自分は関与しなかった。真っ白な部屋に色鉛筆と共に閉じ込められた自分を見るだけだった。今は、自分が、今間違い無くこの思考している自分が部屋の中に入っている。床には磨り減った色鉛筆が転がっていて。
壁一面に書いてあるのは何かの式。数字と記号と自分の筆跡の文字とが入り乱れる魔法式。最初に見た時はラーツに鼻先を砕かれた時だった。今では答えまで何もかもが理解出来るようになってしまった。
最後の答えは、零である。

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あきゅろす。
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