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特殊嗜好「本末転倒」
受けてくれと言われた。受け入れると答えた。後は流れのままに、と思っていたが行為においては人柄が出る。悪魔も悪魔それぞれ。とは言ったものの、慣れない事はやりにくい。

「…それで、一体何をするつもりですか」
「何をする予定だが?」
「それ、聞いた事あります」
「古くから伝わる良い冗談だな」
「…………」

服を脱がされ目隠しをされ、しかも後ろ手に縛られて膝裏に通された棒に足を縛り付けられた状態で一体何をするつもりなのだろうか。何となく解るのもあまり良くは無い。
足を閉じられないし色々な部分に空気が通ってきて肌寒い。こんな事をやらかしたアケミチさん本人の声は聞こえているのに気配はわざと消してしまっているらしく変な孤独感がある。別の誰かが此処にもしも入ってきたらとも。
仮にばれたなら自分の心証が下がるか、それとも逆に自分を縛った相手の心証が、しかし夜這いは文化的な意味合いも持っているのだと、流されたらどうしようか。

「んっ……」

と、自分の中にいきなり何かが入れられて。滑らかながら硬い感触、道具の一種だ。複雑な形状をしていて内側で一部がでこぼこし、細いバネの様な物が外側の、割れ目の部分に触れる。
指とはまた異なる繊細な感触が内側に一つ、外側に二つ。このまま中を掻き回されたりとされるかもしれないのでせめてもの覚悟を。

「じゃあ俺は親戚の機嫌取りに行ってくるから」
「待って下さい、このままの僕を置き去りにするんですか」
「安心しろ、ほんの一時間ぐらいだから…リラックス出来る香を焚いてやるから大人しく眠っていれば直ぐだ」
「何か仕込んでますよね……」

声どころか、アケミチさんの気配すら完全に無くなっていた。本当に出ていくとは自分にどれだけの事をやりたいのか理解に苦しむ。
確かに何かオレンジとレモンと蜂蜜を合わせた様な甘酸っぱい匂いがする。空腹は感じないが精神面に効いている。興奮が冷めていく。霞がかった気分になって、これは掛け値無しの眠気に違い無いが何がしたいのか。
次第に眠気が湧き上がってきて。下の方では無く自分の眠気に響いてくる。何も見えないまま、何も聞こえない。誰か他人が来る気配も無いと信じていたい。

「…………」

違和感が有るものの何時もやっている様な強過ぎる快感は感じない。シューゴに言ったならばさぞや苦笑いを浮かべてくれるだろう。
沸き立つ眠気を抑えられずに、確かな違和感にも全く消え去らないまま身を任せて。誰にも来ないで欲しい。取り分けレンカさんには。

「……………」

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