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光速流星「着弾必殺」
その一。レイゲツさんが鞘から取り出したカタナは青みがかった光を帯びて居る様に見えた。振るった瞬間、水がカタナから飛び出してラーツを襲おうとして。
同時にラーツは、全開だった。身体を魔力に変換し、文字通り力の塊になった状態で踏み込む。尻尾の本数が八本に増えているのが辛うじて見える。またも効率が上がった様で。
その一と二分の一。レイゲツさんは笑ったままだった。勝利を確信していたのだろうか、それとも敗北を信じなかったのだろうか、ラーツの事を人伝てにしか聞いていなかったのならその時点で尊大な誤算を払っている。実際に見ないか噛み付かれない限りはラーツを理解する事なんて到底不可能だ。成績が悪いが頭の回転は速い。
ラーツはどうやら全力のアッパーカットを全速で放つらしい。踏み込み良し、勢い良し。レイゲツさんの懐に踏み込んで居るのだから多分避けられはしない。アッパーだと気付くかどうかも謎だが。
もう集中して見る必要も無い。自分は目蓋を閉じた。

「えっ」
「あれっ?」
「なっ」
『ぬぉっ!?』

ざわめく声を、破裂音に限りなく近い他人を殴打する音と共に耳にする。目蓋を開くと、振り切ったラーツ。そして宙を舞い上がっているレイゲツさん。マズルが折れて出血している。
魔力から元の身体にラーツが急速に戻っていく。しかし尻尾だけは二本。特定の箇所だけ魔力に変換出来るのか。光る尻尾は右腕に絡み付いていた。その手元には何時もの短刀ではなく銃弾が。
自由落下を始めた身体に、躊躇いという言葉すら知らない様に撃ち込んだ。腕に命中して、そのまま砂の上に落ちる。そして動かなかった。完全に気絶していた。これは誰がどう見たとしても。

「ハイハイ終わり終わり。シューゴ君、後宜しく」
「…えー…何か、マイペースにも程があるって言うか…お土産買っていい?」
「そーだね、そうしよう。アレの持ち物はまだしもきちんとぶっ込んできたって証を…」

終わったのだ。呆気無く何ともつまらないがこれで何もかも終わったのは違いないし異論は一切認められない。勝手に歩いて去って行った二人を後にして、残されたのは倒れたレイゲツさんと取り巻きの面々。帰ってもいいのだがいきなりには切り出せない。
ので、自分が先陣を切る事にした。アケミチさんの肩を叩いて振り向かせ、目で言葉を送ってから去っていく。応じてくれて更にレンカさんも続いて。魂の抜けた様になっているクロボク陣営は放っておく。

「…この近くに電気屋はあるかしら?」
「ああ、大きいのが有るとも…」

後は実質自由だ。

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