[携帯モード] [URL送信]
威風堂々「開戦開始」
「ようこそ居らっしゃいました!先ずは此方にどうぞ!」
「あー、うん、最初に言っておくけどお茶を飲みに来た訳じゃないから。さっさと家主を出せ、それとも顔を出せないチキン野郎なの?クロバさんとこと同じく」
『……おいっ!さり気無く儂も貶すんじゃないわっ!』

愛想良く応じてくれた門下生らしきドウギを着た相手達にもこの態度。ラーツは出来上がっている。
通されてみればまず思い浮かんだのは既視感。造りどころか敷いてある小石も庭先に生えている木々もどれもこれもクロバ家と同じ物だった。そして庭で多分自分達を、取り分けラーツを待っていたのだろう犬人の姿。
灰色の体毛にラーツやレンカさんと比べても細めのマズル。ドウギなのは変わらないが一際良さそうな素材に、自分達を見ながらの微笑み。襷で袖をたくし上げており、随分と鍛え上げられた腕が見えていた。腰には大きさの異なるカタナが二本提げられている。成る程、彼に似ているし威厳も十分だ。風体以外は。

「彼こそが我が偉大なるクロボク家当主、レイゲツ=クロボク!貴方様と戦う御相手になります…」
「がはははははっ!我が息子達を倒したと思えば直接此方に乗り込むとは…その意気や良しっ!しかし儂には勝てぬぞ!クロバの様に一切小細工は使わぬからなぁっ!」

連絡が多分ユミヅキさんから通っているのだろう、ラーツを真っ直ぐ見ながら見た目通りの豪快な、そして傍若無人な態度が透けて見える口調での挑発。ぐぬぬ、と小細工だらけの人形から呻き声が。
戦いの場は用意されていた。地面に敷き詰められた白砂。曇り空の暗さを補う為か四方で赤々と燃える松明。実際それほど明るくは見えないのであくまで景気付けか。
案内役が自分達全員分の靴を持ってきている理由も解る。早速ラーツは靴を履き直し、砂に足跡を残しながらレイゲツと向き合って。

「ルールはどうしたいか、そっちで決めて良いよ」
「ユミヅキから聞いたが、確かに相当な跳ねっ返りだな…儂とて若い芽は摘みたくなかったが…売られた勝負、全力で当たらせて貰うぞ?」
「…ミゲツ君については何か言わないの?」
「そんな根性無しクロボクには要らぬわ!まあ彼奴の知り合いの時点で貴様の育ちもたかが知れるがな!」

吐き捨てる様に言い放ったからか、ラーツが苛付いているのが解った。路地裏や道端で柄の悪い誰かに絡まれた時と全く同じ雰囲気を放っている。
となれば、展開も結末も同じなのだろうか。レイゲツさんに対して砂粒程度のお悔やみの思いの用意を。ラーツに対して掌大の労いの言葉の用意を。準備万端。
戦いの始まりを告げる、わざわざ用意したらしい大太鼓の音が重く響いた。

[*バック][ネクスト#]

7/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!