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客人来訪「粗相始動」
通されてみて、改めてアケミチさんの家が膨大な広さを持つものだと実感した。廊下を歩いただけで体感では十分程経っている。こんなに広いと色々と問題が起きそうだが、良く使用人らしき相手を見掛けるし中庭では掃除の真っ最中であった。
ラーツの興味は尽きないかと思っていたが悪口を言う時の様な眼で目の前を歩くアケミチさんを見ていた。今悪口を言ったとしても印象が悪くなると察しているのだろう。代わって先頭を歩く灰色豹人の首がやたらぐらぐらと座りが悪いのは気にならないらしい。寧ろ気にしても得は無い。

「えー、此処が爺さんの、つまる所このクロバ家の家主の部屋だ。出会って一分で椎を外してくる様な無礼な行為は控える事…分かったな?」
「はい」
「うん」
「取り敢えず変な事は起こすなよ…」

やはり木製らしき引き戸を開けると、タタミの感触が靴下越しに伝わった。懐かしい感覚だ。広さは段違いであったが。軽く三十人程度なら大の字になって眠れそうだ。一人でこの部屋を使うには勿体無いとも思える。
その奥に、わざわざ客人が一番難儀しそうな場所にアケミチさんの親だか親の親だかが居た。晩年か壮年と言う言葉が合致する年を食った豹人、の人形がザブトンと呼ばれる敷物の上に乗っていた。手頃な水筒ぐらいの大きさである。

「久し振りだな、爺さん…さて、ふざけていないから安心しろ、術によって見えてるからな」
『……そうじゃ。そんなに畏まらんでも良い。先ずは楽な姿勢で座りなさい、アケミチ以外は』
「……はいよ」

更に人形の後方の引き戸が開かれ、ザブトンが三枚タタミの上を滑る様に動き自分達の目の前に置かれて。灰色豹人は一例をして自分達が入った引き戸を閉めていた。
アケミチさんが正座する中、ラーツは普通に胡座を掻いてザブトンの上に座る。どうしようか考えたが、今の自分は完全な部外者の友達という立ち位置で。せめて粗相は犯さない様にと同じく正座して座る。

『……して、この小僧達は何者じゃ?』
「……何だかな。とてもとても急な話だが、この狐がクロボク本家にかちこみたいと」
「サイ君、頭にゴミが、動かないで」

早速ラーツが自分の髪の毛を一本引き抜いた。粗相は駄目だとさっき言われた筈だが。自分も気になってはいるので大人しくしておく。

『ほっほう!それはまた無鉄砲な!良い良い、一度叩き潰されれば更に男は大きくなるもんじゃからなっ…む?』

早速ラーツが立ち上がり、人形に向かって歩き出した。

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