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直行帰宅「軽口断罪」
特に問題も無く着地に成功したらラーツが何となく残念そうな表情をしていた。それにしても空を飛ぶというのは思ったより体力を使うものだ。三人掛かりなら単純に考えても疲労は三倍。ラーツが絡んでいるから更に八割増し。
雲の上では重宝していた厚着もこうなったら無用の長物だ。既に汗ばんできた。二人が妙な部類に入るに決まっている。取り敢えず服を脱いで。

「…で、何処に行けば良いんですか」
「まずは俺の家だな」
「はぁ?ミゲツ君家にかちこみ掛けるんじゃないの?」
「犯罪をやり返すのはあまり宜しくないよ」
「いきなり乗り込んだとしても門前払いか一気にボコボコにされるのが良いとこだ…俺の家の名前を使えば、向こうも多分断りにくくなると思うしな…」

木造の建物、眼鏡、人間がやたらと多く感じる通りを歩きながら先頭を行くアケミチさんが呟いた。目の前のラーツはあちこち視線が定まっていない。一日で帰るには勿体無い気もするが言い出したのは彼本人だから。
重そうな黒雲が上空を覆い尽くしている。今にも雨が降りそうな天気だ、雨具は手に入るだろうか。それでいて湿気を閉じ込めているらしくやたらと湿っぽい。日帰りならばこの気候には慣れる筈が無く。ラーツのコンディションが心配である。






「此処だ」
「そんなに見栄を張る必要は感じないんだけど?」
「…………」

出店で買った鶏肉の串焼きを片手にラーツが呟いたのも無理は無い。鳥の部位は何処か解らないが味わった事のない歯応えだ。ハツと書かれていたが何から発しているのか。
アケミチさんが立ち止まったのは、この辺りで最も大きなやはり木造の家であった。白塗りの壁に金属製の鋲が打たれている大層な門が自分達を出迎えている。雰囲気から見ると拒む様で。
と、屋根の角に監視用の機材が着けられている。古風な見た目とは裏腹に時代には順応しているのか。軋みを一切立てずに門が開くと、中から出てきたのは豹人。体毛こそ明るい灰色だが何処と無くアケミチさんに面影が似ている。年齢も恐らくは同程度だ。

「久方振りだなアケミチ。そして見損なったぞ」
「落ち着け、再開を祝いたいがそれは間違いなくお前の誤解だ」
「しかし嫁を二人同時に連れ込むなんて。しかもまだ若い。性別も同じだ。そこまで飢えていたとはもはや同情すら不可能だ」
「よーし、サイ、そしてラーツ、ちょっと待っててくれ」

豹人の身体を押しやりながらアケミチさんが門の中へと消える。肉を食べ終えたラーツが串をどうするか迷っている様で。残る肉を味わいながら、結局燃やされる竹串を見て、
ごぎっ、と生々しい音が門の向こうで鳴り響いた。手のひらに付いた灰を払い終えたラーツが此方を見る。恐らくは、との意を込めて頷きを返した。

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