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謝礼で御礼な衝撃通達
「…五股掛けた奴の助けになったぁ?畜生、俺もソイツの面拝みたかったな……」
「……案外普通のジャッカル人でしたよ」

皆が帰ってきた。自分の舌に突っ張る様な感覚も殆ど無くなった。今や言葉は十分に足りている。
現在当たり前の様に虎人の膝上に座らせられてるのはまあ良いとして、白竜人は何故か端で踞っている。

「レザラク?何かショッキングな事でも有りましたか?」
「……何でも」
「副所長、レザラク先輩はエロ小説三冊パクられた上取り返そうとしたら丸々燃やされちゃったんですよ」
「言うなコラァ!俺の哀しみが解ると思ってんのか!」
「アレは仕方無いよ。だってレザラク、三冊纏めて一つのポケットに入れててさ」
「そうそう。ポケットが持たなくて破れた所を」

ニッグさんとロッシュに向かい回し蹴りを繰り出すレザラクさんを見ながら、スノーさんと視線を合わせてみる。
ぎこちないが笑い掛けてきてくれた。それでもあの事は一応忘れる気はない。何れ責任を取って貰おう。
所長がエンフィさんに身体を預けて眠っている。尻尾が伸びきり心底安心している模様だ。どちらに対してかは解らない。

かつかつと扉が叩かれる音。スノーさんが応対して扉を開く。レザラクさんはまだ若干荒れている。

「今後とも御贔屓に」
「え、サインとかは」

目深に帽子を被った犬人種の中年だった。あっという間に去っていってしまったが。
案外薄い紙袋。スノーさんが開いてみると新聞が入っていた。ジンクさんが以前娘に手を出した新聞社のもの。

「……向こう三年、無料で送ってくれるらしいですよ、良かったですね」
「丸く収まったみたいだな。強いて言うならばもっと直接的な……」
「郵便でーす!」

再び、今度届いてきたのは一枚の封筒である。中には見事な装飾が施された二枚のカードと手紙とが入っている様だ。

「……このカードを使うと、銀行側が私達用に造った口座が使いたい放題みたいですね」
「セグ、貴方が持っておくべきですよ」
「……何か、御礼なのは解るが」

郵便。スノーさんが応対。小包。中には。

「……干物?」
「便利屋から…名産品を送ってきたと…」
「安く済ませたのがバレバレだな…」
「……後は大臣様とギャング団だっけ?」
「…あまり高価なプレゼントを此方に贈ると、あっち側の心証が下がるんじゃないですか?」

ロッシュが落胆した様に溜め息を吐いた。新聞に口座に干物。然り気無く皆安上がりに済ませてしまっている。
もう少し奮発して欲しかったなぁ、とフーガさんが呟くのを聞いていれば再度郵便。今度は自分が出た。例により封筒だった。
封を開けて中に入っていた手紙を読む。

「……どーだ、サイ?またがっかり系か?」
「………騒ぎの張本人が結婚するみたいですよ」
「え」
「なっ」

更にジンクさん一人に対し花嫁は五人居た。式は再来月らしい。手紙を渡して、

「…ちょっと殴りに行ってきます」
「俺も続くぜ」
「哀しみをぶつけてやるんだ……」

ぞろぞろと外出し出す面々。その手には純粋な武器が握り締められていて。
エンフィさんが制すのを見ながら、干物を一枚取り出し齧ってみる。案外香ばしかった。


【第二十巻 終】

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あきゅろす。
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