生理現象は不可避で
「……ブフッ……アーッハッハッハッハッ!」
突然、どこかの大事な糸が切れたように犬人が席を立って笑い出した。
「……あばよ!」
こちらに視線を向けた、
自分をしっかり見つめた、
その姿勢のまま身体がぐらついた、
床に倒れた。
「………見事な散り様だ。」
牛人が呟いた。
「……決着が着きましたぁ!飲み比べ対決に勝利したのはぁ!…えー」
「…『clear-dice』。」
……え。
「……そうっ!勝者『clear-dice』だ!
「ワァァァァァッ!」
「そしてぇ!…えー」
……自分が?
「……サイ=スロードです。」
「……そうっ!サイ=スロードが!飲み干した酒の量が過去最多の───!」
「オォォオォォォッ!」
「サイ…君がそんな胃袋してたなんて……」
…自分が一番ビックリだ。
そんな量あったら、一日の晩酌がえーと……ああ、5〜10人での宴会が…
兎に角、貞操の危機が無くなって良かった良かった。
さぁ、あとは帰って………
「…ねぇロッシュ、トイレって何処に?」
「……奥行って横。…ふふっ、そりゃあ、あんなに飲んだんだからねぇ。」
ロッシュの呟きを聞く暇も無い。素早く、刺激を与えず、スーッと。
……ノックをし、中に誰もいないことを確認、大急ぎでドアを開け、鍵を閉めて
「……ふぅ…っ…」
どうにも相当な量を溜め込んでいたようで。
あの量を飲み干してしまったから当然とも言えるが。
出し切るのに非常に時間がかかってしまった。
今のうちにロッシュが質問攻めにあってたりしたら
…トイレを出たら皆自分に寄ってくるんだろうな。
例によってズボンを整え、備え付けの蛇口を捻り、手を洗う。石鹸がぐちゃぐちゃでないのが少し嬉しい。
濡れた手をズボンで拭き、ドアの鍵を開け、押し開いて、
すると目の前に影が近づいて
よく見ると手が自分の顔に
「むぐ…っ……!…?」
口が塞がれて声が出せない。
鼻の下に毛が当たってもどかしい。
便器が背中に触れるまで後ろに押されて、
ガチャ、と鍵を閉める音が。
「へへっ…動くなよぉ…」
眼光鋭い虎人。ヤクトさんよりやや黄色が強い体色。
欲望にまみれた様な声が、ぞくりと自分の肌を粟立たせる。
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