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正誤のち失語、そして再開
申し訳無かった、と頭を深々下げて床に額を擦り付けている白狼人。その頭は爆発に巻き込まれて結構毛並みが乱れてしまっている。
その脇には黒豹人の女性。彼女が白狼人の頭部を爆発に巻き込んだ張本人である。ハノンより少しだけほっとした様な表情を浮かべていた。
そして、自分の舌を治療に取り掛かる、ヴィアナさん。確かに誤解は完全に解消したが、欲を言うならば出来ればハノンに来て欲しかった。
やはり他人に舌を弄られると言うのは気が引けてしまう。治癒の光を浴びて忽ちに出血が止まり痛みも引いていくのを感じる。

「……これで良し…三日程はあまり舌を使わない事だ」
「……ありが」
「いや、礼は要らないよ。出来るだけ喋らない方が良い」

試しに軽く動かしてみたら何か突っ張るような感じがする。確かに喋らない方が良さそうで。また此所は憲兵の総本部だ。
戻ろうと思ったならばこの有り様だ。やはりジンクさんについては断っておけば良かったか。いや、あれで問題は無い。後は彼女達が何とか納めてくれるだろう。

「……帰るのか?」

立ち上がり、肯定の意を込めて頷く。ヴィアナさんが満足した様な含み笑いを浮かべながら、自分を門前まで見届けてくれて。

「久々に随分と楽しめた…けふっ、君には感謝しているよ」
「……………」

何をしてどうやって楽しめたのかについては、今尋ねる事は出来なさそうであり尋ねない方が良いと思った。







『ジンクさんに関しては無事に送り届けました』
「ふむ、して報酬は来るのでしょうかね?」

帰ったならばエンフィさんに依頼の報告。あらかじめ喋れない事を知らせた上で筆談によっての。フーガさんが舌を気遣って温めのスープを出してくれた。

『少し難しいでしょうが、状況が纏まったら多分来るだろうと思います』
「……果たして纏まるんでしょうかね…」
『後はジンクさん達の問題です』
「そうですね…しかし報酬に関わっていますから、早急に解決してくれると有り難いですね」

ペンを置いてスープをゆっくりと飲む。特に舌にしみたりはせずに胃にも優しそうな味がした。
エンフィさんが頭を撫でてくる。今まではまるで其所が自分の定位置かと言う程に自然に、自分の身体はエンフィさんの膝上に乗っていた。
眠くはならない。フーガさんがそんな光景を見ても一切気にしていない。然り気無く自分が誘われている事に気付いた。つまりは続きをしようと。

「フーガ、客が来たら応対、宜しくお願いしますよ」
「解ってるよ。たっぷり楽しんできたらどうかな?変に水を差すつもりは無いからね」

話していたのかどうかは解らないが、自分の身体は呆気無くエンフィさんに運ばれる。
口に出来ないのは寂しいですね、とそっと首筋にキスをされた。

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あきゅろす。
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