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帰宅と御託の確保完了
暫くして持ってきたレモンティーとしっとりしたクッキーを何と無く食べながら、会話はしない。しようと思った時に限ってぎゃあぁぁだとかぐあぁぁだとか扉の内から声が聞こえてくる。
爆音が響いては氷で包んだ筈の扉にまで振動が届く。ジンクさんが来てもこれだ、鎮静にまでまだまだ時間が掛かるだろう。

「……手作り?」
「いいえ、安売り」
「御馳走様、それじゃあ僕は帰るから」
「協力に感謝する」

クッキーを六枚と茶を二杯。簡単な言葉を返し合ってから自分は戻る。他人の恋路を邪魔したらエンフィさんに蹴り殺されるかもしれない。
ハノンの方が、寧ろ女性がこういった事に関しては理解が有るだろうから。再度迎撃されては格好も付かない。徒歩で帰るのが良いだろう。ジンクさんの報酬支払いには何とかしてくれる筈で。
結構な時間が掛かるが、ゆっくりと帰りたかった。エンフィさんとの約束があるのを前提にしたとしても。




「君には…見覚えが有ったのに…」
「…………」
「私は悲しいぞ…まさか君の様な非常に可愛らしい少年がっ……」

現在白狼人の憲兵に袈裟固めを掛けられ完全に動けなくなっている。連絡が行き届いていなかったのか、それとも自分の不注意が悪いのか。
何れにせよこのまま固められて白狼人が涙ぐんでいる姿を見ても何も始まらないし何も終わらない。息が詰まるが誤解を解かなければ。

「すいませんが、彼に関しては既に送り届けました」
「………その組織の名は?何処で受け渡したんだい?今答えないならば、少し苦しい目にあって貰う」
「憲兵に引き渡しました。場所は総本部で」
「なっ……裏切り者が居たのかっ!誰だ、速急に答えてくれっ!」
「……………」
「言えないかっ…確かに私も仲間を売りたくない、その気持ちは大いに解る…だが、私も後には引けない、それだけは解ってくれっ!ふんっ!」

誤解が更に拗れた上に首を絞められる。おまけに苦しい上に声も出せない、もう少し白狼人には落ち着いて欲しかった。本当に。
唯一動く右手首に巻き付けられた悪魔の牙。逃げたら更に話が歪んでしまうがこのままでは良くない。
躊躇い無く白狼の背中に突き刺した。つっ、と声を漏らして絞める力が強さを増す、視界が霞んできた。熱さを感じる。
背中から炎が噴き出していたが、構わず自分の首は締め付けられていた。恐ろしい程の我慢強さ。これなら自分は勝てないな、と白んだ意識で悟る、
身体全体の力が抜けて目元に薄く涙が滲む感触。息苦しさと同時に就寝時の様な、腕に込められているのは確かな覚悟。
最後まで白狼人は涙を浮かべ自分を捕らえる事を悲しんでいる様であった。あくまで正義の為、だろうか。
そして

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