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修羅場に山場に割り切る結果
巻き添えの恐怖心よりも興味の方が勝っていた為、至ってそれが当たり前の様に自分も案内役を追うハノンの後を追っている。身長差がある分自分はそれ以上足早に動かさなくてはならない、
息が詰まるし汗ばんできた。もう少し二人にゆっくり、とは言えないから何も言わずに頑張って走る。マフラーを使うのは何と無く狡い気もしていたから。

「………」
「……此方です!さぁ、早く!」
「…あぁ、急に帰りたくなってきたぁ……」

今更言わないで下さい、と口には出せなかった。呼吸を落ち着かせるので精一杯だ。しかし扉一枚隔てているのに、相当な殺気が伝わっていて。
茨の道の行く末はやっぱり煮えた鉛の坩堝。救い様はもう無い。後はジンクさんの頑張り次第である。ハノンから励まされ、ゆっくりと持ち手を掴んで、坩堝の蓋が開かれた。

「……だから貴方達には関係無いって言ってるじゃないのぉぉっ!」

大鉈が飛んできたので、慌てて蓋が閉じられた。ずん、と僅かに刃先が貫通してしまっている。確か狼人の女性が、しかし何が誰やら解らない。
興奮しているらしくジンクさんの顔すら解らない様であった。折角運んだのに事態は全く収束の欠片すら見せておらず。こうなったら少々危ないが。
ハノンに然り気無く目配せしたら頷いてくれた。意見が合致しているら。最早ノーリスクで切り抜けられる範疇を越えているのだ、仕方ない。

「ジンクさん、僕達が何とかしますからもう一度開けて下さい」
「ぜぜぜ絶対だなっ!少なくとも説得前に命が無くなるなんてやだぞっ!」

動揺しているがしょうがないだろう。寧ろ今の内にして貰った方が良い様な。
大丈夫だから、とハノンも答え、気合いを入れる為か両の頬をぴしゃりと叩いた。覚悟は決まった。ジンクさんも、自分達も。

「よぉしっ!おいお前等、手をとめ」

扉を開けた途端に自分が無理矢理ジンクさんを押した。え、と言葉が詰まり自分の方を振り返るが仕方無い事だと割り切って。
扉の中に全身が収まるのを確認すると同時にハノンが自分のマフラーを掴み身体を引き戻す。苦しさを覚えたが仕方無い事だと割り切る事にする。
そして扉を閉めた上でハノンが分厚い氷で覆ってしまい、何か使おうがまず開けられない様にしてしまった。当たり前だが中にはジンクさんと彼が手を出した五人が残っているが仕方無い。

「……出入り口はこの扉だけ、階数があるから窓から飛ぶのは覚悟が要る」
「…もう帰って良いかな?」
「茶を一杯と軽い菓子ぐらいは」
あぁぁぁぁぁぁ……
「貰おうかな」

ハノンが歩いていった。自分は万が一にも逃げないように此所から離れてはいけないと察して。
声が聞こえる。数人集まっているなら仕方無い。

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あきゅろす。
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