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集中力は時間跳躍が
「…ねえサイ、君の歓迎会で豪華な料理が夕食に出るんだよ。」
「…フーガさん、張り切っているみたいだからね。」
喋っている暇は無い。こちらは二杯目。向こうは六杯目に突入している。
「僕、出来れば一杯食べるためにお腹を空かせておきたいんだ。」
「まあ、それはそうだろうね。」
「ハッハァ!何喋ってんだ?マスター、七杯目!」

「……交替。」
ロッシュが手でジョッキを自分の目の前に押す。

「……僕、歓迎会の主役なんだけどね。」
「でも、僕もお金あまり持ってない。逃げ場は無い。」
「カァァッ、ウマイなぁ!八杯目!ん?」
「…………交替だ。」
おや、向こうにも動きに変化があるようだ。蜥蜴人が犬人の肩を叩いている。
「向こうに合わせる。そうしないとフェアじゃない。」
自分的には犬人がそのまま続けて貰いたい。
「ハッ、あんなチビ共にゃ俺一人で十分だっての。」
その余裕が後に響いてくれれば。

「替われ」「飲みたいのか?」「替われ」「…じゃあ頼んだぜ!」
…あっさり引き下がっていた。何で歓迎会前にこんな事をしなくちゃならなくなるのだろう。
「…………」
まあ、今は飲む事に専念しよう。
ジョッキを手に取り…少し重い。
ややぐらぐらさせながら中の液体を口に含んだ。
変なクセの無い、スッキリとした後口。マスターの言った通りにとても飲みやすい。
「……ふぅ…」
空にしたジョッキを前に出すと、直ちに二杯目が注がれる。
時間も周りも気にしない、ただ目の前のジョッキを空にすることだけを……





「………ふぅっ…」
ふと気になって壁掛け時計を見てみれば、予想以上に時間が経っている。
「……ガボァ…負けるかぁガガガ……」
向こうを見ると床に蜥蜴人が倒れていて、いかにも顔色の悪い犬人の手にジョッキが。
「………」
牛人が何故か驚いた表情で自分を見つめている。
真横を見るとロッシュも何故か以下略。
自分の手に空になったジョッキがまた握られている。
そういえばカウントしていなかった。
「ロッシュ、僕今何杯目?」「……は?」
「悪いけど何杯飲んだか数えてなかったんだ。で、僕は今何杯目?」
「………ネタで言ってないよね。」
「集中すると目の前の事しか見えなくなるみたいで…」
お陰で色々重宝したり災難に会ったり。
歩きながら読書したあの時は本当に途方に暮れた。

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