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証明の照明の完全論破
さて、後は目的地へと向かえば良いのだが街中の様子が変わっていた。こんなに通行人が多かったなんて自分は知らない。
ざわ、ざわと喧騒、居たか、すいませんが、と店先で誰かを探している音。こんな規模で探しているのが一人のジャッカル人。
貴重な光景でもあり教訓とも言えるだろう。ギャングの一人娘と夜を共にしてはいけません、という。ジンクさんは赤く染めた筈の顔を蒼くしていた。

「……あの、もしもバレたら、これ」
「小声でもそんな事は喋らない方が良いと思いますよ」
「………………」

変装したとは言え周りには敵、敵、敵、敵、敵。ばれたら自分どころか便利屋が危ない。無論勝手に変装に協力したヴィアナさん達憲兵側も問題になるかもしれないから。
否、ヴィアナさんだけは早くバレて欲しそうな表情を裏に含んでいた。何と無く落ち着かない様子から身体を動かしたいのか、人を殴りたいのかの両方だ。置いて逃げても大丈夫だろう。
それにつけてもこんなに人が多いのに、大分自分達は目立ってしまっている。見た目は完全に壮年の狼人に寄り添うボナさん、さっきから咳払いが止まらないヴィアナさん。そんな一同が横に居ながら一切動じないハノン。無論自分もだ。
何にせよ今はバレていない。緊張を見せない様に。出来る限りは自分達は通行人になる。どんなに奇妙な風景であったとしても。

「おや、奇遇ですねヴィアナ隊長」
「あっ………」

目の前に現れたのは茶色い毛並みをした熊人だった。全体的に丸っこいが肥えては居ない体躯をしている。ステッキを付いているが足に不自由は見られない、恐らくは武器だろう。
冷淡な自分とハノンと同じ様な口調をしていた。表情も氷の様に冷たい。ヴィアナさんの表情が僅かに緊張していた。ボナさんもまた同じくばつが悪そうな顔で。
今眼が合った。自分を完全に「観察」している眼だ。足元から頭上までしっかりと見られている。おまけに厭らしい気持ちは全く持って無い視線なのだから。
完全に、自分そのものを観察し、推測している眼だ。

「随分と大所帯ですね、今から何処へ向かうのですか?」
「ああ、近隣区域の便利屋でな、協力を申し出てきたんだ」
「そうですか、してボナッシュは何を?」
「品定め中にゃ」
「そうですか、何故ヴィアナ隊長はボナッシュの行為を咎めないのですか」
「御互い合意の上だからにゃー」
「そうですか、それで」

熊人が懐から取り出したのは、小型の機械だった。見掛けから察するに、どうやら盗聴器の様で。

「先程、レンカが飛んでいくのを見ましたが貴方達との関係性は?」
「それは、まあ」
「落ちてますよ」

え、とボナさんがジンクさんを見てしまった。落ちているからには足下を見るのが普通なのだが。
熊人は直ぐ様短筒を掲げ、繋げられた紐を引いた。途端に、まだ明るいと言うのに、花火が上がった。

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