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作為と推移の外出開始
さて、困った事になったのは明らかだろう。此方側も彼方側も。これも実際は全てジンクさんが全責任を負うべきである。が、依頼として受け取ったからには完遂せねばなるまい。
レンカさんによれば最早ジンクを直接引き渡さないと絶対に収集はつかない、二股以上掛けられたらそんな物、と。それならば大手を振って引き渡せるだろう。

「……しかし、今の状況が外で彼を探している方々全員に直ぐに伝わりますかね?」
「絶対に無理。こんな時に限って回りは固まるから」
「ごろごろごろごろ」
「……つまり、けふっ、外に彼を追ってくる相手をのめしながら、こふっ、憲兵総本部まで引き渡すんだなっ、かふっ」

別にのめす必要は無い。寧ろ武道大会も近く負傷して出られなくなったらどうするのか。何れにせよ相当な難易度である。
荊の道を歩いた末に煮えた鉛で満ちた坩堝にジンクさんを放り込む様な物だ。しかしこれ以上に良い手は思い付かないという。
最善の一手が態々相手方の本拠地に飛び込む、色々と終わってはいるが仕方あるまい。向こう側とてジンクさんに対してサーチ、アンドデストロイまでは来ていない筈だ。

「…それで、誰が彼を守りますか?」
「……そうだな、俺が露払いで、けふっ」
「駄目ですよ隊長、貴方やり過ぎますから」
「…変装させれば問題無い」

ヴィアナさんが落ち込んでいる中、そう言ってハノンはメスと縫合糸を取り出した。変装ならばもう少し薬臭くない物を使うのでは無かったか。

「あの、すいません。今俺の耳は確かに変装って聞いたんすけど、何すかそれ」
「誰か抑えて」
「了解っ」

背後から伝わる生暖かい感触からか、ジンクさんがひぎゃあと声を上げる。フーガさんが羽交い締めにし、暴れてはいるが抜けられては居ない。
ハノンが液体の詰まった注射器を持ちゆっくりと近付いていく。随分と表情を持たない顔のまま。自分と同じく。

「お互い合意にしろ、ここまで大きくなった。ノーリスクで出来るとは思わないべき」
「ちょ、やだっ、いや、やっ、あぁぁぁっ!?」

声でばれやしないだろうか、少し心配だった。




「どうだ?見付かったか?」
「はっ!現在捜索中ですが、何分この規模で探しているのはたったの一人ですからね!」
「そうだ。だからこそ気を抜くな」
「了解でありますっ!」
「………」

フーガさんとエンフィさんを便利屋に残し、自分達は総本部へと向かう。レンカさんは自前の飛行ユニットで飛んでいった。
ジンクさんに関しては最早完全に別人になっていた。顔に風船を入れ、食塩水で膨らませ。更に耳も幾らか削り、色粉をはたいて赤毛にした。
おまけにボナさんがその隣で絡み付いている。怪しく思われないか尋ねてみたが「コイツにとってはこれが正常」らしい。
ラーツについて少し心配になった。

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