別物で紛い物な心象
ハノンに「誰かを追ってきただとかそういう事は無いか」と念入りに尋ねてから皆を招き入れた。二人を喚んだら四人も来た。自分の求心力はこんなにあったのだろうか。
念入りに尋ねてから改めてジャッカル人を呼ぶ。全員私服だからか、涙混じりに一気にボナさんに抱き着いていた。
「ボナッシュさぁんっ!俺…俺もうっ……」
「よーしよし。取り敢えず再会を祝う為に何処か寝室を」
「ボナ、止めろ」
「サイくぅぅぅんっ!何で私を伝書鳩代わりに使ったのよ、くのくのっ!」
「むぎゅ」
「…何と言いますか、貴方達は誰ですか?」
レンカさんに頬を掴まれながら色々と収拾がつかない。エンフィさんが尋ねる。全員憲兵の筈だが。
「ああ、これは失礼した…私達は憲兵だ…」
「…ふむ…憲兵ですか…彼を捕まえる気は一切有りませんね?」
「もしもそうだったら既に捕まえています。ヴィアナ=キラプタ、一部隊の隊長をしている…」
ヴィアナと蒼蜥蜴人は名乗り、協力の意思を表す為か右手を差し出した。表情は穏やかに微笑んでいる。元から強面であったが、エンフィさんもその手を握り返して。
と、ハノンが既にカウンター席に座り何か飲んでいる。フーガさんと話し合っていて、打ち解けるのは良い事だが少々早過ぎやしないだろうか。
「…それで、憲兵が何故此所に?それからサイ君、後で詳しい話をお願いします」
「……憲兵よりも大事だから」
「……ええっ!ハノンちゃん、まさかサイ君とそんな間柄にっ」
「俺だってジンクだって知ってにゃかったら普通にしょっぴいてたにゃ。連絡してて感謝にゃ」
理由は様々であれ自分に荷担してくれる。自分こんなに求心力はあっただろうか。今はハノンの頬を触ってるレンカさんは何と無く解る。協力してくれる代わりにまた技術を貸せだとか言うのだろう。
しかし、ヴィアナさんは何故来たのか解らない。あの冤罪に負い目を感じているのは分かるが、わざわざ直接赴いてくれるとは。
「…その、既にそこの彼がギャング団やら便利屋の娘にも手を出した事は知っててな……」
「俺が仕込んだテクニックは役立ったかにゃ?」
「それはもう…喘ぎ狂ってましたよ……あの時止めておけば……」
ジャッカル人なジンクさんが嘆く。間接的にはボナさんのせいでもあったのか。ハノンが話を聞きながらアイスクリームを食べている。何故今。
「…もしかしたら…憲兵とギャングと便利屋が…一斉に襲ってきたかとおも…けふっ、けふっ」
「大丈夫ですか?」
何か夢を語る様な少年みたいな眼をしながらヴィアナさんは語った。咳払いに見せ掛けて笑いを堪えていた。
どうやら一部の性格が獣に近いらしく。つまりは戦えるかもしれないから協力するとの事。
「……え、ちょっと待って、今一斉にって…え?」
「……ああ、現在ジンク被害者が全員手を組んでウチの副隊長の指導の元そこら中漁り回ってるにゃー」
「………その規模は?」
「述べ凡そ六万ちょっと。内銀行と新聞社が雇った便利屋五組」
それは凄いですね、とエンフィさんが諦め混じりに呟いた。
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