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専ら自ら負った業
「……あの、そのビッグマグナムはどうされるおつもりで?」
「お気になさらず」

闖入者は犬人種で、耳が大きな若者だった。狐人とも狼人とも違う、たしかジャッカル人だった筈だ。そうは言っても間違い無く自分より年齢はあると思う。
前を大きくしているエンフィさんを前にして若干緊張、もしかしなくとも恐怖を覚えているのだろう。フーガさんが微笑みながらその盛り上がりを見ているのはこの際気にしない。

「…あの、暫く匿って下さいっ…!…マジお願いします!」

彼は平然と床に額を擦り付け始めた。プライドが低いかそれ程までに追い詰められているかのどちらかである。
怪訝そうな表情を浮かべっ放しだった。どちらのせいでエンフィさんがそんな顔なのかは判断がつかない。

「……それで、一体全体どうしたのですか…?」
「…あのぉ、言いにくいんですけど……とある便利屋の一人娘の純潔を貰っちゃいまして」
「……へぇ………」
「お互い合意の上っすよ…それで死に物狂いで俺を追ってるんです…いやもう、捕まったら殺される……」

涙を浮かべながら彼は打ち明ける。エンフィさんの表情が変わっていく。苛立ちから次第に何時もの様な、段々と前の盛り上がりも収まってきた、
確かにそれは大変な事だ。娘を持った父親の気持ち等分からないが、親が我が子をどれだけ大事にしているかは大体理解出来る。
そして自分達に何をどうして欲しいのだろうか。匿うだけでなく、解決しなければ意味が無い。

「…それだけじゃないんす……その、─…新聞社の社長に娘が居まして、まあ、お互い合意の上で、純潔を奪っちゃったんです」
「…二人目ですか?」
「…ふぁい…それから……銀行会長の孫娘を…勿論合意の上っす、それは認めます」

最早エンフィさんは完全に呆れていた。憐れみすら視線の中に混ぜられていて、彼を得体の知れない何かを見る様な目で見ている。
フーガさんは何故こんな時にも微笑んでいるのか。もしかしなくても楽しんでいるに違いない。
何にしても彼は非常に厄介な存在となってしまったらしい。このまま追い出して施錠するのが流石にベストな対応では無いだろうか、

「……あの、言いにくいんですけど…この国の大臣の息子が……その……」
「お互い合意の上で純潔を奪ったんですね」
「…はい……あと…隣国のギャング…マフィアって言った方が良いですかね…ボスの一人娘が…お忍びでこの国に」
「奪いましたね」
「……はいぃ…もう…助けて下さい…本っ当に朝日を拝めるか心配なんです……」

床に這いつくばったまま足元に縋り付く彼。本気の本気で泣いては居るが、自分達の身も相当危なくなっている。
下手を打ったらたっぷり銃弾他を浴びる事になるだろう。それは避けたい。

「……分かりました、報酬は別としてこんな依頼、所長なら飛び付くでしょう」
「……え、じゃあっ」
「終わった後にはきっちりと戴きますので」

所長が受けそうなら、仕方無い。

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