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荒くれは必須な
「ここは情報屋と噂好きな人がわりと集まるんだ。」
「その通り。情報屋を利用する便利屋と噂好きな奴等の噂の交換場所と…お陰でわりと儲けさせて貰ってる。」

確かに、そんな感じの人が多い気がする。
山羊人が座るテーブルに、切羽詰まった顔でコインを積んでいく猫人。
耳に顔を当てて他に聞こえないように話し合う四人組。

一部を除けば、至って普通の酒場だ。
出されたソーダ水を口に含むと、薄く爽やかな味が口内に弾ける。
しゅわしゅわと飲みにくさを感じない弱めの炭酸が、味を引き立てる。

「……ソーダ水、気に入ったかい?」
「…確かに、美味しいです。」
「顔に出てたからね。完璧に綻んでた。」
なんと。自分の表情を緩ませるとは、このソーダ水は恐ろしい……
「そろそろ出ようかな。でももう案内する所無いというか、
案内する程じゃない場所とか……」

洒落た壁掛け時計を見ると時間はまだ夕食時よりずっと早い。
夕食前に町中を五周ぐらいは出来そうだ。

ならばどうするべ「ハァーッハッハッハッハッ!」

扉を勢い良く開けてやけに通った低い声で高笑いしながら、
筋肉質な蜥蜴人、その後ろに三角耳の犬人と牛人が入ってきた。

「ようマスター!酒だ!酒を出せ!」
「…はいよ。……これまた柄の悪い…」
良く聞くと喋ってるのは犬人だけ。あとの二人は店内を見回している。

…三人が並んでカウンターに座ったのはまだいい。
なぜ自分の隣に?

「んんー?……よおそこの人間、奇遇だな!」
吐息が首筋に当たっているけど、振り向いたら駄目だ。
「お前みたいな細身、すげェ好みでな…」
肩に手を置かれたけど、振り向いたら駄目だ。
「どうよ…一晩俺に身体を預けて……」
「今すぐその暑苦しい手を離しなよ、ワン公。」

嗚呼、救いの兎様。

「……あぁ?生意気なチビが…これはこれで」
「……今すぐ手を離せ。臭いが移る。」
「……俺等を誰だか知らねぇのかよ?」
「…噂にもなってないね。」

わー、なんという言葉のドッジボールが自分を挟んで……わー。


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あきゅろす。
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