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宣戦布告には心理通信
「……………」

世界も中々、変わったものだ。自分の回りの世界も、全体的な世界も。大掛かりな情報程回るのが早い。号外として、新聞屋が記事を好き放題にばら撒いていた。「これを機に購読を!」とのチラシを挟んで。
とある国が、戦争を起こしたらしい。矢鱈滅多と他人に厳しいその国、近隣国の旅行者だかを独自に「粛清」していたらしい。粛清した相手方の名前を載せたリストが公表された。
被害者が大いに沸き上がった。どう足掻いても無くなった者は死体も粉々に粉砕され廃棄された為戻ってこないが、詳しい説明、贖罪、賠償金等々を一斉に求めた。その返事に国が出した答えがこれだ。

「世の中、不思議な事もあるもんだなぁ……」
「……まあ、自然発火とか青魚が降ってきた事もあるらしいから、ギリギリ俺は認めるな」
「…しかし、本当にこんな事、有り得るとはね……」

件の宣戦布告だが、既に戦争は終わった。何でも、兵士が全員「戦いたくない」等と言いながら大泣きし、最終的に国王自ら時限爆弾を抱えて爆散。
戦争で出した被害は、国王一人。飛んでいた蝶が一羽で、およそ一時間で無条件降伏してしまった。確かに不思議な事もあるものだ。

『……そう思うのは勝手だけど、実を言うとやったのは僕だ』

先程からシゼルニーの声が聞こえてきたり、思考が読まれていたりしているのも不思議の一つだと言えるのだろう。
『不思議じゃないよ、何だったら君の靴を裂いてあげようか?』(それは困る。裂いた後直してくれるなら良いけど)

「……あれ…サイ、それ…」
「…………」

急に涼しくなったと思えば靴が縦に裂けていた。ヤクトさんが指摘した、と思えば元通りになっていて。
(それで、何がしたいの?)『僕が孵った事を知って欲しくてね。戦争を止めたのは、その景気付けに』

「あれ?さっきお前の靴、破れてなかったか?」

『これで君に恩返しが出来る』(いらない)『……何で?何も欲しくないの?』(君は友達だし、あれは全然辛くもなかったから)『僕はあげたいんだ』(何も必要無い。今の自分は満たされてるから)

「んー…確かに破れてないよな…」


『昨日あんな事をしたのに?』(そんな日もある)『僕の気持ちを拒否するの?』(そうだよ)『友達の気持ちを?』(菓子やパスタ類なら受け止めるよ、ちゃんと君が作った物なら)『……………』

「ヤクトさん、そろそろ靴を返して下さい」
「裏側も確認しねぇと……」

気にせず自分は、手の中の靴をもぎ取った。

【第十八巻 終】

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