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低身長は高低差か
「…で、ロッシュ。背の低い新入りに町案内してくれないか?」
「モチのロンだよ!凄い清々しく案内出来るよ!」

ぼむ、と自身の胸を叩いてその兎人──ロッシュは応えた。

「なら頼んだ。俺は報告せにゃならんので。」
「了解っ!…案山子を片付けるから、ちょっと待ってて!」
そう言って案山子がある方向に振り返って

……あ、案山子が消えた。……あ、またいきなり風が。
……あ、器具室に案山子を抱えて入ろうと。
……あ、また目の前に
……風が。

「お待たせー、さ、案内するよっ!」
「……はい。」

袖をくいくいと引っ張ってくる様は、とても子供らしい。
やっぱり自分より年下なのだろうか。



「……ここが広場。昼とかにはよく人が集まるんだ。」
確かに憩いの場所だな。今座っているベンチはどこも壊れていない。
中央の噴水がなんとも。
「……くぅぅっ…!ようやく僕より背の低い人が入ってくれたぁ…」
「…あの、ロッシュさん。」
「いやいやいやいや、ロッシュで良いよ。敬語じゃない方が良いな。」
「…じゃあ、ロッシュ。便利屋の人数は?」
「……それがまた面白い話でね」
柔らかな笑みを浮かべながら話す。
「副所長が何人か依頼で連れていっちゃってね。」
「はあ」
「…その依頼の場所がとっても遠いんだ。」
「へえ」
「だから今いるのは今まで会った人だけじゃないかなっ。丁度五人。」
「…少ないね。」
「だから所長は君に期待してるんじゃないかな。」
「……はあ」
「この話はこの辺で終わりっ。次は行きつけの酒場に行くよー。」

……人数が人数だけに直ぐに足引っ張りそうだな。
まあ、雑用係なら……
フーガさんと同じか。それは嫌だ。

「いらっしゃい。」
扉を開けると、酒と煙草の匂いが広がる。

酒場『drop-egg』。
カウンターに、テーブルに、丸椅子。よくある店の構造。

まだ昼時なのに酒を飲む者。適当な料理を摘む者。
「ま、いつも通りってトコだね。…マスター、ソーダ水。」
「はいよ。…そちらの人間さんは?」
ロッシュはカウンターに座り、自分もその隣に。
「……同じ物を。」
「はいよっ。…あら、新人さんかい?」
青い虎人のマスターが、こちらに向けて尋ねる。
「はい、まあ……」
「……小さいねぇ。」
ふと横を見てみると、ロッシュが笑っている。
……このためにここに来たのか。

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あきゅろす。
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