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睡眠時には思考続行
硝煙の匂いが手に染み付いた辺りで、結局絞め落とされたスノーさんを担ぎ上げるアケミチさんと共に鍛練場から出ていって。
特に言葉を交わす事も無く部屋へと戻っていく。最後におやすみと聞こえたから、お休みなさい、と返した。そして部屋の中へと。
不思議と充実感に満たされていた。ロッシュにはまだまだ敵わないのだろうが。それでも自分は、着実に腕を上げている。嬉しい。

「……………」

しかし、それを公には表せない。笑顔を封印されてしまっているのだから。他愛無い会話から呆気なくも、自分が馬鹿正直に受け止めているのも捨てきれないがとにかく自分は笑えない。
笑う事は出来る。試しに僅かながら口角を上げてみた。元からあまり笑わない生活を送ってきた為、違和感を感じて直ぐに元に戻す。
笑った事なんか、あったのだろうか。練習に数回。禁止される前に一回。だけど楽しい時は何処と無くそんな雰囲気が出ている、と以前言われた。

「……………」

眠気が睡魔で、自分の頭の奥底へと着実に進行している。聴覚がぼんやりとし始め、目蓋はゆっくりと閉じていく。随分と都合の良く、頭の回転は鈍っていなかった。
自分が独りになった時には、恐怖は無かった、あの時には景色を眺めながら、つまりは何も考えていなかった訳で、
考えずにぶらついていたら偶然が重なって、衣食住には困らなくなった、だけど気味悪がられ、あまり本も読めなかった、確か自分は今よりも本に傾倒していた。
そして引き取られ、幾らか手先を使った。気の毒だったが、仕方無い。彼自ら選んだ道だ。
もう皆居なくなってしまった。最初は自分、が皆を目の前から振り切った。十中八九は残っている、肝心の相手は、あの時居なかった。
今会えたら会えたで、自分の身体は分割されやしないだろうか。睡魔が回転軸に絡み付き始める、そろそろ意識が落ちる。
急激に頭の中の回転が鈍っていく。睡魔の仕業だ。抗う術は有るが今眠くならなくなったりはしたくない。甘んじて睡魔を受け入れる。脱力。深呼吸。

「……………」

そう言えばおやすみと眠る間際に言うのも、自分は知らなかった訳で。

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