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依頼報告には縺れ合い
依頼人は歯と写真を見て、笑みを浮かべていた。最近色々擦れ違いが多かったから仕方無かったのよ、気にせずに受け取ってちょうだいな、と青色の宝石が付いた指輪を渡された。
自分の指には大き過ぎるし、スノーさんの指にはきつい。ニッグさんには「未来の妻とお揃いの奴のしか着けたくない」と普通にポケットに放り込んだ。

「……何と言うか、簡単でしたけど重い依頼でしたね…」

帰り道、誰に言う訳でもなく、恐らくはニッグさんにスノーさんが話し掛けた。

「…浮気を知ったのは所謂女の勘、だとかいう物ですかね。指輪はどうしましょうか」
「……えーと、やはり質屋に売るか何かした方が良いんじゃないんでしょうかね?」

答えるのにもだるそうにしているニッグさんの代わりに自分が答えた。狼狽えながらもぎこちない笑みを浮かべて返してくれた。
内容はともかく、日帰りでこの報酬量は中々悪く無いな、と考えながら便利屋へ戻っていく。時々スノーさんと他愛無い話を拡げて、やはりぎこちない事を確認しつつ。




「……で、この報酬、誰か欲しいって奴は居ないか…?」
「……………」
「良いから質屋に出せよそれ、怨念が籠ってるぞ、多分……」

所長の前には結婚指輪が三つ。二つには青い宝石が、一つには白金製の何の装飾もされていない。
所長は珍しく依頼を三つ掛け持ちしていた。妻の不倫調査が一件、夫の浮気調査が二件。
妻の不倫を確かめて欲しいと依頼をしたのがニッグさんが懲らしめた張本人であり、あの夫婦は二人して他人に手を出していた。
そして、あの依頼人、別の夫婦の夫に手を出していた、と。話を聞いている内に、皆殆ど、開いた口が塞がらなくなっていて。

「作りは悪くないのにな……まあ、仕方無いか」

惜しそうに所長が指輪を引き出しの中に入れる。後に質屋に出すのか、このまま忘れ去られるのかは所長次第。

「…………あっ」

スノーさんが釈然としていない表情のまま何かに気付いた。今回が此所に来てからの初依頼、の筈だ。
小さく拍手を送ろうと思ったが、代わりにフーガさんが花火を刺したケーキを持って来ていたので止めた。

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あきゅろす。
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