朝の始まりには役者固定
「お早うございます」
「ああ、おはよう……」
手招きされるがままに自分は定位置へ、要はレザラクさんの膝上に乗った。朝食を食べながら何をしようか考える。所長は珍しく起きて動いていた。
スノーさんも相変わらず此方の目を直視して見ない。そんなに負い目を感じているなら、あんな事しなければ良かったのに。
エンフィさんが目配せして来たので取り敢えず頷いた。心なしか何時もよりも嬉しそうにしている。
「……で、今回の依頼は、サイとスノーとニッグで頼むぞ…」
「え」
「はぁ」
「はぁ?」
まさかの人選に驚きの声が上がる。主にニッグさんから。スノーさんが此方を見ていたので、見返したら即座に視線を反らされた。
恐らく体力をやたらと使う仕事ではない。何か色々と、軽い仕事の筈だ。
依頼内容。浮気の可能性がある亭主の身辺調査、及び浮気していた場合ぼっこぼっこに懲らしめて、との事。
報酬は浮気をしていた場合結婚指輪一つ分増える。色々と複雑だが、浮気をしていた方が悪い。つまりは亭主のせいだ。
スノーさんと自分は聞き込みを。二人で浮気があるのかどうかを確かめる。ニッグさんは亭主懲らしめ用。つまり浮気の事実が無ければ仕事は無くて、
「良く数人纏めて女はべらせて、お持ち帰りもしてたみたいです」
「宿屋で写真を見せたら、女を引き連れて確かに泊まった、と。その翌日はシーツを洗う羽目になったらしいです」
「ああ、そう………」
自分達は喫茶店のドリンクバーを飲みながら昼の温かさに微睡んでいるニッグさんへ報告した。
結構足が張ってきている。聞き込みも中々歩き回って体力を使うのに、ニッグさんは今までずっとドリンクを飲んでいた。
「で、肝心の亭主は?」
「彼女の家ですよ、案内します……」
自分の先導の元、ぎしぎしと例の音が響いているアパートの部屋の前までニッグさんを案内する。証拠も欲しい、とカメラを携えたニッグさんが扉に近寄ると、平然と蹴破った。
軋みが急に無くなり、かしゃかしゃとシャッターの切られる音、そして別の、強いて言うなら人が人を殴っている様な音が暫く響いて、ハンカチに何かをくるんだニッグさんが出てきた。
「それは?」
「歯。懲らしめた証拠として」
「………」
役割分担は、きちんと出来ていた。
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