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事後処理には残り香
白色に塗り潰されていた意識が回復する。全身を汗で濡らしながら、大きく呼吸をして息を整えて。自分が出した白濁から漂う雄の匂いが鼻を突いた。
埋まっていた拳を少々力を込めて引き抜く。ぐぽ、と間の抜けた音がして、散々自分で苛め抜いていた孔は中々閉じないままだ。

「はぁ…ふぅ……」

濡らしたベッドシーツは今更洗う訳にもいかない。下手に抜け出したらばれる可能性が高くなる。
いまだに部屋に匂いを供給しているそこへ布団をきっちりと被せて、窓を開けた。強い夜風が部屋の中へ舞い込んでくる。寒い程だ、下半身丸出しだと現に寒い。
暫くして部屋に漂う匂いが抜けていくのを感じながら、服を着直す。どうせ洗うのだから、と今まで内部を掻き回していた手をシーツで拭った。

「……………」

さて、どうやって眠ろうか。布団を床に敷いてその上に眠れば部屋の中にまた匂いが籠る、窓を開けておけば匂いはないが確実に風邪になる。
このまま布団の上で眠っては、掛け布団ごと洗わなくてはならなくなる。暫く考えた結果、

「……………」

座ったままの体勢で、机の上に腕を組んで眠る事にした。首に違和感があるが、仕方無い。ここまでやっても、匂い等で分かる相手には自分が何をしたか分かるのだろう。
それが中々、虚しかった。疲労感もあってか、体勢の割には早く眠る事が出来た。



「……………」

朝起きると、首筋を痛めていた。やむを得ない事にしよう。シーツを剥ぎ取り、丸める。染みになっている部分が中心に来るように、せめてもの抵抗。そして洗濯かごの底へ無理矢理ねじ込んだ。
ついでに手を念入りに洗う。石鹸をたっぷりと擦り付けて。これで大体は大丈夫、だろうか。

「………お早う御座います」
「…………」

振り返ると同じく丸めたシーツを手にした所長が立っていた。此方の挨拶も返さずに、自分の肩口辺りに鼻を近付けて。

「…………」

特に何も言われず、所長も洗濯かごの奥底へとシーツを押し込み、自分の肩を軽く叩いてから去っていった。
きっと、知られたのだろう。それで何も言わなかった。所長が無視をしたのなら自分も今のは気にしない事にした。


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あきゅろす。
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