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夢見心地には柔らかな猫
何処か見た覚えがある部屋だ。壁も天井も真っ白な。ああ、確か此所は夢の中、だったかな。数本の色鉛筆が見付かった、それからどうすれば良いのだろうか。
此所が夢の中だと解ったら後は好き放題に出来る、らしい。自分の思い描くままに夢を変えられる。自分は赤色の鉛筆を手に取り、壁に向かった。
自分の意思で動いては、いない。此所は夢の中だと頭で認識してはいるが、身体の動きはまだ制御できない様だ。しかし夢の中だから自分の頭の中であり、頭の中で自分が夢だと解ってその中の身体が動かない。入り組んでいる。

「……………」

壁に向かって、赤鉛筆で何かしらを書き込む。どうやら夢の中の自分が書こうとしているのは、数式らしい。

「……………」
「……あ」

身体の節々が痛い。夢の中で見た部屋と同じぐらい小綺麗な天井が。そして、不思議な斑模様をしている猫人が自分の側に。
四肢がちゃんと残っているか確認。一応ちゃんと両腕両足残ってはいる。視界も良好、両耳もちゃんと聞こえている。
獅子人のユニットが暴走して、叩き落としてからそのまま気を失ってしまったらしい。そして何故この猫人、ボナッシュさんは自分のベッドの中へ入ろうとしているのか、

「………対した外傷は無くて、軽い全身打撲で済んだにゃ…ちょっと長くなるけど、今日中には帰れるにゃー」
「そうですか……」
「……それから、レンカが本気でぶちキレてた上で感謝してたにゃ。恐怖を知らないアホが、賢く緊急事態を処理したって…」
「そうですか……」

ボナッシュさんが自分の体に擦り寄ってきた。痛みは走らなず、ふわふわした毛並みの感触が僅かに伝わる。何度か味わった事があるが、一番柔らかい様な。
頬擦りしている内にごろごろとボナッシュさんの喉が鳴り始めた。自分の体に触れて結構楽しんでいるらしい。

「ふみゅ…それから、君が爆発させたあのユニット、残りの燃料が無かったから爆発しなかったらしいにゃ…」
「……………」

抱き締められ、頭を撫でられる内にまた眠気が沸き上がってくる。大分慣れた手付きだ。目蓋が下がって来ているのが解ったのか、間近でボナッシュさんが笑った。

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あきゅろす。
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