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勝利礼讚には不慮の事故
『圧倒的な大差!そして全裸にさらば!観客の夢と希望をあっという間に奪い去ってしまいましたぁぁ畜生!』
『後少しで周回遅れだったにゃー』
『俺達の夢を返せぇぇ!』
『お前なんかどっかにいっちまえぇぇ!』
「……………」

自分は取り敢えずはベストを尽くせた筈だ、観客達の評判はともかくとして。まだ獅子人達は半周以上も残っていた。少し飛ばし過ぎたのか、まだまだ速さを上げても大丈夫だったのか。

『夢と希望は諦めたとして、二人の間から切迫した状況が離れませんっ!どちらが勝つのかは誰にも解らないっ!』
『性能的には殆ど一緒なのかにゃ。後は操縦技術と意地のみかにゃー』

二人は確かに良い勝負を繰り広げていて、狼人が僅かながら差を付けて最後の直線へ。自分は邪魔にならない様に、コースの脇へと早歩きで移動した。
獅子人と狼人がゴールラインへ近寄る。耳鳴りにも似た高い音が獅子人から、狼人はほぼ無音で空中を滑っていて。
獅子人のスピードが更に上がった。噴出口から長々と火柱が上がっている。ゴールラインを先に越したのは、獅子人の方。腕を掲げて勝利の雄叫びを上げている様だが、ユニットからの音で聞こえなかった。

『燃料の勝利ぃぃぃ!最終的には魔力を使わない完全な火力が!勝ちまし…え?』
『止まる様子が無いにゃ…緊急事態…けど、どうすれば良いかにゃ?』

次第にスピードを落として地面に着地し、落胆する狼人と未だに飛び続けている獅子人。スピードを落とした様子は無く、落とせなくなっていると解った。
コメンテーターのボナッシュさんが言う通り。あんなに高速で動き回る物を、どうやって止めれば良いのだろう。
燃料が切れたら真っ逆さま、という場合も考えられ、長考は出来ない。となれば、自分が行くしかない。マフラーを起動、地面を蹴って飛行再開。獅子人は口を大きく開け、叫んでいるらしい。
並走出来るまでスピードを上げ、獅子人の真下へ。肩を掴み、マフラーを巻き付けてやりながら手探りでユニットが固定されたベルトを外す。

「っ…君は……」
「最初に謝っておきますが、壊しますから。御免なさい」

マフラーを巻き付け終わると、自分は獅子人から外したユニットを両手でしっかり持って斜め下へ向かい滑空。地面が迫る、靴が地面に擦れた所で、思い切りユニットの噴出口を上に。つまりは進行方向は下、

衝撃、暗転。

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あきゅろす。
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