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緊急代走者には無理強い
ノートの角がぶつかったらしい額の痛みをずきずきと感じながら、狼人と獅子人の話をうまい具合に纏めてみる。未だに謝罪が無いのはどう言う事か。
飛行ユニットを造るにあたり、魔力駆動を主体とした狼人と、燃料駆動を主体とした獅子人と両方合わせて使ったレンカさん。三人の中で誰が一番早いか、競争をする事になった。
緊張感を持たせるため、一位になった相手以外は罰ゲームとして一日全裸で通常勤務に当たる事にした。レンカさんの独断で、自分もその競争に混ぜる予定だった。
そして、自分のマフラーを細かく解析したレンカさんが競争から降りると言い出した。大体は自分のせいにされてしまって、先程ノートの山に埋まる羽目になったという訳だ。

「……そもそもかのっ…彼は素人でしょう!何を根拠に勝てないって言うんすか!俺達の夢はどうなるんですか!」
「そうだそうだ!改造に改造を重ね、一切無駄の無いカーブと一瞬で最高速に到達する加速度を成し遂げたのに!全裸がお預けなんて嫌だ!」

自分を指差しながら二人の抗議は続く。自分もまだ状況が上手く飲み込めていないのに。ただ武器類一式を剥ぎ取られて知恵の輪を解いただけだ。
何気無く額に手を当ててみると、薄く血が指先に付着していた。通りで痛みが長々と続いていると思ったら。

「…ぎゃあぎゃあ騒がしいっ!良い?サイ君の作ったあのマフラー、動力源からして桁三つぐらい違いがあんのよ!そんなに気になるんなら競争して白黒はっきり!私はサイ君が勝つのに賭けるわ!もし負けたら一日じゃない、一週間全裸のまま仕事してやるわよ!」
「……………」

あ、今確かに、レンカさんが、自分をこのごたごたに巻き込みきった。態々ハードルを高くした上で。確かに動力源はとんでもない物だが。

「っしゃあぁぁっ!やってやろうじゃねぇか!」
「では一時間後にお願いしますよ!それまでにブラッシングでも済ませたらどうです!それではっ!」

慌ただしい調子で二人は出ていってしまった。残されたのは自分とレンカさんと身体節々の痛みと額の出血と。

「……頑張ってね!」
「…………」

断ったら断ったで、非常に面倒臭い事になる。選択肢は一つしか無い様だ。

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