待機中には不慮の事故
腕に巻いていた牙も捕集器もマフラーも装飾銃も取られてしまった。「何か服に掛けてないかしら?ちょっと全部脱いでくれる?」と言うレンカさんに流石に無理ですと断りを入れ、解析し終わるのを待つ。
「あと、暇潰しに好きなだけ解いて良いからねーっ」
そう言って最後に渡されたのは大量の知恵の輪。一度レンカさん自体が解こうとして挫折した物なのかもしれない。
何れにせよ今は全部解ききってしまった。もう一度繋ぎ直す事もあっという間に完成してしまって。
「……………」
暇だ。本の一冊でも持ってくれば良かったか。この考えに既視感。飛行船の上でもこんな感じだったか。
ノートに手を伸ばして少々捲ってみても良いのだが、バレたらレンカさんが何をするか解ったものではない。ああいうタイプは初対面の相手でも特に。
扉も壁も分厚く作っているのか外側から音が漏れる事も無く。とにもかくにも空虚な時間が過ぎていく。台車の上に乗せられたまま。
「……出てこいやおらぁっ!」
「え」
不意に扉が開かれた。勢いはそのままに台車の持ち手にぶつかって、車輪は余計な摩擦力を生み出さないままその力を殺さず移動へと置き換え、
要するに台車が自分を乗せたままに全速前進、そして前方に有るのはノートの山で急な事に頭は回って身体は動かず
台車からぶつかって、積み上げられた下部分のノートが凹んだ。バランスを崩した上方のノートはそのまま自分の頭の上から降ってきて、
「…………!」
「……………」
また何も見えなく、何も聞こえない。しかも身体中に圧迫感すら伝わった。
「………………」
「……この小さいガキが、あのマフラーを造り上げたってのか?…可愛い」
「納得いきませんね。それに勝負から降りるってのはどういう事ですか?」
レンカさんの両脇に居るのは、随分と恵まれた体格をした狼人と獅子人だった。同じくつなぎ服である事から、レンカさんの部下だろう。
「解析して分かったわ。私のあれじゃ、この子のマフラーは抜けない。勝てない勝負に挑戦する義理は無い…だから、勝負を降りる、何か質問でも?」
「何ですかぁ!負けた相手は全裸で一日過ごすってのは無しなんすか!鬼だ、悪魔だぁっ!」
どうやら自分は、とんでもない厄介事に巻き込まれかかっているらしい。
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